「自分はできる」と信じる能力「自己効力」とは

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近年、ビジネスの場面で注目を集める「自己効力」は、ある行動に対するその人の自信を示す心理学用語です。仕事をする上で大きな力となる自己効力の特徴や、注目されるようになった背景、自己効力を高めることで生じるメリットなどについて青山学院大学名誉教授の林伸二さんにお話を聞きました。

 
 

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「自分ならできる」と信じる力=自己効力


――自己効力とはどのようなものでしょうか?
 
自己効力とは、自身の持つ知識や能力を用いて、「自分は良い結果につながる行動ができる」と信じる力のことを言います。つまり、自分がすでに持っている知識やスキルそのものに対してではなく、それを用いて「自分にはあることを成し遂げられる」と信じる強い気持ちのことです。自己効力は、1977年にカナダの心理学者であるアルバート・バンデューラが初めて提唱しました。
 
知識や能力は、人が何かをする、そして成功する上で不可欠なものですが、「自分が持っている知識や能力を行動に結びつけることができる」という意識がなければ、成功条件にはなりません。自分が持っている知識や能力を行為に結びつける自己効力によって、初めて物事を成し遂げることができるのです。
 
自己効力は、自己に関わる諸概念(アイデンティティ、自己価値観、自己イメージ、自己確信など)を形成し、活性化させる役割を果たします。また、自己効力はモチベーションを生むカギになります。逆に自己効力が低下した場合には、意欲の喪失、努力の放棄が起こります。
 
――自己効力が注目されている背景について、どのように見ていますか?
 
自己効力の概念は、米国社会の1970年代の人種間対立による治安の悪化や経済不況、生活環境の悪化などの下で、人々の間に健全な価値観とアイデンティティの確立が求められてきたことをきっかけに誕生しました。
 
近年、日本でもこの言葉が注目されるようになっているのは、労働生産性の低下や経済沈滞化、それによる働く人の生活の質の低下などが背景にあります。会社での日常にマンネリ感やストレスを感じて、仕事に喜びも意欲も失っている人たちも増えていることから、働く現場においてのモチベーションや行動力につながる自己効力が注目されているのではないでしょうか。

 
 

自己効力と自己肯定感の違いと関係性


――自己効力は、自己肯定感と混同されがちですが、その違いを教えてください。
 
自己肯定感というのは、「自分は、ありのままの自分で良い」と感じられる気持ちのことです。一方で自己効力は、前述のように自分の持つスキルで「行動ができる」と信じる力のこと。この2つは違う概念ですが、自己肯定感は、自己効力が存在することで感じられるものなので関係があるといえます。
 
ちなみに、自己肯定感が弱くなってしまう直接的な原因は劣等感の存在です。適度な劣等感は、人間であれば当たり前に持っているもので、人の成長を促進させる動機付けの力になります。しかし、劣等感が強くなりすぎると簡単には取り除くことができなくなり、その人の生活や仕事においてもあらゆる弊害をもたらす可能性があります。自己効力が低く自信が持てないと強い劣等感を持つ原因となります。
 
――自己効力の高い人と、低い人にはどのような特徴がありますか?
 
自己効力の高い人は、低い人に比べて以下のような特徴があります。

 

  1. 仕事上、挑戦的な目標を設定する、難しい問題に積極的に取り組む傾向がある
  2. 好奇心や興味、欲求が強い傾向がある
  3. 自分の力で仕事を習得する、問題を解決しようとする傾向が強い
  4. 誠実に仕事に取り組み達成意欲も高く、新しい経験にも前向きで、目標を自ら設定する傾向が強い
  5. ストレス知覚が弱く、たとえ失敗してもそれほど落ち込むこともなく物事の達成に向かって強く努力していく


一方で自己効力の低い人は、様々なストレスの原因となる刺激・ストレッサーに反応しやすく、強いストレスを知覚する傾向にあります。この結果、仕事のモチベーションが低下したり、やる気を失ってしまったりすることがあります。さらに、自己効力が低い人は、自分を過小評価する傾向があり、他人への依存心も強い傾向にあります。
 
従って自己効力が低い人は、与えられた目標が高すぎる、課題が難しすぎると感じたらやる気を失い、自分がやれると感じられる程度の業務にしか取り組まない傾向にあります。それでも目標を達成しなければならないと思うと、他人に押しつけたり、その場を一時的につくろったり、場合によっては意図的に欠勤、職場放棄なども起こす可能性があります。

 
 

自己効力は、様々な生活の場面でも必要とされる能力


――自己効力を高めると、どのようなメリットが生まれますか?
 
自己効力を高めることは、充実した幸せな人生を送ることにもつながります。なぜなら、自己効力が問題を解決しようとする意欲を生み出し、実践的な問題解決能力を高めるからです。自己効力の高い人には、前述のように、他人への依頼心が弱く、自立心や独立心が強い、問題解決の経験が豊かで、ものごとに積極的に取り組む姿勢が強い、失敗を恐れるより成功への期待が強いなどの特徴が見られます。これらの考え方が、問題解決に対する意欲を生み出すのに役立っているというわけです。
 
ちなみに、解決しなければならない問題というのは、仕事や職業選択をはじめ、ライフプランなどの人生を左右するようなものから、気の置けない友達との付き合いや、その日の献立など日常的なものまで様々です。問題を解決するプロセスにおいて、自己効力が低い人よりも「自分はできる」と信じられている人の方が成功裏に事を運ぶことができるでしょう。自己効力は、仕事はもちろん、生きていく上でもあらゆる場面で重要な役割を果たすものなのです。

 
 
 

<取材先>
青山学院大学名誉教授 林伸二さん
経営学博士、青山学院大学名誉教授。専門は、組織心理学、組織変革論、戦略的人的資源管理論、リーダーシップ論。著書に『人と組織を変える自己効力』(2014年、同文舘出版)、『自立力』(2020年、風詠社)などがある。
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan +笹田理恵+ ノオト

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