AIと仕事の生産性を巡る世界各国の今後の展望

By Indeed

世界各国の企業は、AIによる生産性向上で浮いたコストや時間をどう活用していくのでしょうか。この記事では、世界8か国にいる Indeed のTalent Strategy Advisorたちに、各国の仕事の現場におけるAIの導入や活用の状況について話を聞いていきます。 

キーポイント 

  • AIの導入により、世界各国で仕事のあり方が変化していますが、その変化の仕方は、各国の労働力需要、法規制、文化的な価値観により異なります。
  • AIによって生産性の向上や従業員体験の向上といった可能性が広がる一方で、その恩恵をどこまで得られるかは、企業がその浮いたコストや時間を従業員に還元するのか、それとも収益を優先するかにかかっています。
  • カナダではバーンアウトが懸念され、オランダでは人材不足が起きるなど、職場におけるAIの未来は、AIの倫理的な導入や従業員の育成、長期的な人員計画の有無に左右されます。

イタリアでは、AIの導入で労働人口減少への対応が進む可能性があり、英国では、AIの規制の仕方が緩いため、さまざまな実験的導入が盛んに行われています。米国では、企業がAIを活用して企業の業績向上を図りながらも、従業員のウェルビーイングにも注力するようになる可能性があります。このように、AIで仕事のあり方が変わるというとき、その変化の仕方は国ごとに少しずつ異なります(さらに、AIが仕事に与える影響は職種によっても異なります)。しかし、AIの普及が進むにつれ、人間が働くことの意味、そしてその未来について、世界中で深い問い直しが始まっています。 

企業はAIの導入によって削減できると考えられる時間をどのように利用していくのでしょうか。1週間の勤務日数を減らしたり、勤務時間の柔軟性を向上させたりすることで、従業員に還元するのでしょうか。あるいはそのメリットを独占し、従業員を犠牲にしながら収益を最大化しようとするのでしょうか。

「企業は従業員の価値をどう評価するかを改めて考える必要があります」そう話すのは Indeed のTalent Strategy AdvisorであるKyle M.K.です。「生産性だけでなく、従業員のアイデアの質、周囲との信頼関係、そしてチームの士気を高める力も含めて考えていかなければなりません」

この記事では、生産性やAIに対する国ごとの考え方の違いが見えてくるよう、世界各国にいる Indeed のTalent Strategy Advisorたちに、企業がAIをどのように活用しているのか、そしてそれが世界中の働く人々にとって何を意味するのかを尋ねました。彼らの見解をご紹介していきます。

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米国:職場でのウェルビーイングへの投資が進む

AI時代の到来により、米国では職場のウェルビーイングへの投資を増やす企業が出てくる可能性があるとM.K.は予想しています。従業員の生産性がすでに最大限まで向上していたとしても、従業員の離職が大きな損失をもたらすことに変わりはありません。しかも、未来の労働力を担うZ世代の若者たちが企業に求める働き方の柔軟性は、現時点で高い水準にあります。

「収益重視の会社であったとしても、実際に収益が改善するのは従業員の成果が向上したときです」とM.K.は語ります。実際、これを裏付けるデータもあります。Indeed が開発した職場のウェルビーイングスコアの測定結果をオックスフォード大学が分析した調査によると、従業員のウェルビーイングが向上すれば、その会社の利益や収益、バリエーション(企業価値評価)の向上にもつながるとのことです。
「業務の自動化を進める上で、より人間中心の方針を取る企業こそが、長期的にはより収益が大きく向上すると考えられます」

M.K.によると、AIが普及した未来では、週4日勤務制への移行などによって企業が従業員に収益を還元することで生産性が向上し、人々のメンタルヘルスが改善される可能性があると言います。また、AIが習得できないスキルを従業員が身につけられるよう、浮いた時間を研修に充てる企業が現れる可能性もあります。 

その一方で、こうしたアプローチを取らず、AIによって生産性が向上した分をレイオフ(一時解雇)や採用凍結の言い訳にしようとする企業も無数に現れると考えられます。この点はM.K.も認めており、「すべてが都合よく進むと考えるのは甘いでしょう」と述べています。「とはいえ、テクノロジーが進化するこの時代に従業員を最優先に考える企業が長期的には競争を制すると強く信じています」

オランダ:AIを活用して人手不足に対応 

アムステルダムのTalent Strategy AdvisorであるAlvera Lubbersは、「オランダでは人材不足と生産性向上という2つの理由でAIの導入が推進されている」と語ります。特にこのような事情でAIの導入が進んでいるのは、人材をなかなか補充できないことがあるテック業界やヘルスケア業界です。Lubbersによると、オランダの一部の病院では、人手を集めようとしても集まらないため、過重労働の医師や看護師を支援するために、AIを搭載したチャットボットや診断ツールを活用しているそうです。

それでも、多くの従業員が職場でのAIの普及に不安を抱き続けています。「オランダ各地でAIツールを導入する企業が増えるにつれて、人々の警戒心が高まっていくのが間違いなく見て取れます。自分たちの仕事がAIに奪われるという恐れを感じている従業員がいるのでしょう」Lubbersはこのように指摘します。しかし、一部の職が失われる可能性がある一方で、新しく生まれる仕事も数多くあるだろうとLubbersは予想しています。 

さらに、業務に必要な時間がAIで大きく削減されれば、その分だけ1週間の勤務日数が短くなる可能性があり、人々は気力や体力の回復に費やす時間を増やせるようになるとLubbersは述べています。また、オランダの労働者保護の仕組みにより、大量解雇の波がすぐにはやって来ないとも考えています。Lubbersはこう語ります。「AIの導入によって浮いたコストを従業員の育成に再投資する企業は、これからの時代を勝ち抜けるスキルの高い人材を揃えることもできるのです」

イタリア:スピードは遅いが着実に導入が進む 

ミラノのSenior Talent Strategy AdvisorであるGianluca Bonacchiによると、イタリアでは国内の法規制の状況や会社としての評判に関する懸念により、企業がAIを導入しようとする動きが非常に遅く、特に求人への応募者の審査では遅々として進まないそうです。 

「国内の各種規制により、従業員を密かに監視することは断固として禁止されており、明確な同意を得ることなくデータを収集するツールには厳しい制限がかけられています。また、イタリアはプライバシーやデータ保護に対する意識が強く、特に機密データについてはなおさら重視されているので、人事業務におけるAIの利用に影響が及ぶ可能性があります」Bonacchiはこのように述べています。「企業は意図せず誰かを差別したり、AIによってバイアスが生まれたりすることがないようにしたいと考えているのです」

それでも、AIを活用することでイタリアの労働力減少という課題に企業が対応するチャンスがあるとBonacchiは見ています。「イタリアの生産性向上のスピードは、長い間、他国よりも伸び悩んできたため、AIは企業の成長と経済の活性化を実現する上で効果的な手段となるでしょう。世の中の大きな変化があるときは常にそうですが、働く人々への影響は避けられないでしょう。しかし、労働人口の減少が進む今、AIは本来解決が難しい人材のミスマッチに対応する手段として捉えるべきです」

ドイツ:より多くの人に機会が生まれる 

デュッセルドルフのSenior Talent Strategy AdvisorであるNorman Mauerいわく、ドイツの企業各社はAIツールの導入に対して「非常に意欲的」であり、その背景には国内の自動車産業やエンジニアリング産業の好調ぶりがあるそうです。

Mauerによると、一日に何万個もの荷物を扱う某大型配送センターでは、AI翻訳ツールを使ってさまざまな国籍の作業員が倉庫内を迷わず移動できるようサポートしていると言います。Mauerは次のように語ります。「昔は4つほどの言語で作業を指示するロボットの声が鳴り響いており、その4つの言語のどれかがわからなければ、そもそも仕事に就くことができなかったでしょう。しかし、それもAIのおかげで変わりました」

さらにMauerは、ある大型コールセンターで簡単な要望に答えるチャットエージェントの使用が最近始まったという話をしてくれました。「おそらくこの仕事はAIに取って代わられますが、そうなれば人間の従業員はもっとレベルの高い仕事に移れるはずです」Mauerはそう語りつつ、今では従業員が大規模言語モデルを使って不明点を直接尋ねられるようになり、ハンドブックに頼らざるを得なかった頃よりも仕事のしやすさが大きく向上していると付け加えました。

ただし、MauerはAIのおかげで1週間の勤務日数が2~3日にまで大きく減少し、残りは余暇に充てられるようになるという見通しについては懐疑的です。配送センターやコールセンターのような職場で現実になりそうな筋書きについて、Mauerは「働く時間は変わらず、荷物の移動や情報共有の効率が上がる」と予想しています。 

英国:事務作業の負担が軽減

イングランドのSenior Strategic AdvisorであるMatt Burneyいわく、英国ではAIの規制の仕方が相対的に緩いため、さまざまな実験的導入が盛んに行われているとのことです。「企業は戦略的に有利な立場を得てきたと思います」

また、AI時代が雇用主を週4日勤務への移行に導くとは考えていないものの、BurneyはAIの導入によって人事部門や採用部門のリーダーの仕事の質が向上し、それと同じくらい重要な点として、仕事に対するやりがいも高まるだろうという楽観的に見ています。「優秀な採用担当者であっても、事務的な作業が多すぎるせいで500個の案件に対応しきれない状況があったとして、そういった作業はすでに自動化されているので、今なら対応しきれるはずです。そのため、人間が得意とする人間ならではの業務に集中するための時間の余裕が生まれます」

その一方で、書類処理以外に大きな付加価値を提供できていなかった従業員は、AI時代の普及によって淘汰される可能性もあるとBurneyは予想しています。事務的な作業の大半が自動化されている世界で、「こうした人たちは早々に排除されるでしょう」とBurneyは述べています。

フランス:AIスキル育成の動きが広まる

パリのTalent Strategy担当Senior ManagerであるEric Grasは、AIを高速で突き進む列車のようなものと捉えています。フランスでは、AIが急速に進化していく様子を多くの企業が眺めており、飛びつくことを躊躇しています。その理由としては、未知のものや新しさに対する不安ですが、AIがもたらす可能性のある生産性向上も、その背景にあります。Grasは次のように説明します。「AIが自分の仕事の半分をもっと早く終わらせることができ、しかもその成果が自分より良ければ、マネジャーやCEOにその仕事を奪われるかもしれないと私たちは考えているのです」

一方、AIの導入に乗り出している企業では、業務の効率化を目的として、従業員がAIツールの使い方を習得できるよう力を入れています。「そして、トレーニングを受けた従業員が、AIツールの実際の活用例やメリットを別の従業員に伝えていくことが期待されます」とGrasは話しています。

しかし、多くの企業や人事担当者は、AIで収益が向上することの裏付けを今でも求めています。Grasは次のように語ります。「私たちは証拠を提示しなければなりません。AIが特定の業務において人間よりも短い時間でより多くの成果を出せるということを証明し、かつAIで業務の時間を30%削減でき、人手が足りない部分で効果が得られるということを示せれば、採用担当者も納得できるでしょう」

インド:人間の代わりとしてではなく、仕事のレベルアップのためにAIを活用

バンガロールのTalent Strategy AdvisorであるRohan Sylvesterいわく、インドが世界の他の国々と違うのは、「企業も求職者も非常に楽観的で自信のある見方をしている」ところだそうです。Indeed が実施したある調査の結果によると、仕事でAIツールをすでに利用している人の割合は、人事部門や採用部門のリーダーは98%、求職者は91%に及びました。これらの数字は調査対象の11か国の中でも最大です。

「インドでAIの導入が進んでいるのは、主に生産性や効率の向上が目的です」このように話すSylvesterは、人事部門や採用部門のリーダーの大半が、AIによって採用プロセスのスピードやパーソナライズにプラスの影響が出るという考えを持っていることを指摘します。「多くの企業は、浮いた時間やコストを、創造、イノベーション、そして候補者体験の向上といったより付加価値の高い分野に活用していくと考えられます。採用担当者の立場からすれば、これは候補者との有意義なやり取りをするための時間が増えることを意味します」

カナダ:バーンアウトが増える恐れ

Indeed のTalent Strategy Advisorであり、トロント在住のAlexandra Tilloによると、カナダはAIの導入に関して他の国とは異なる様相を呈しており、その背景には多くの要因があるそうです。要因の1つとしては、カナダに2つの公用語があるために、「AIツールの導入が複雑になる」ことが挙げられます。また、人工知能およびデータ法(AIDA)など、AI関連の法律を早くから施行していたことも要因の1つです。 

「そのため、正式な法律が発効するようになる前から、企業はAIの倫理的で透明性の高い使い方をするよう強いられてきました」このように話すTilloは、雇用の公平性や人権に関する各種法律がカナダでしっかりと整備されていることも指摘します。「こうした状況があるため、カナダの企業の人事部門は他の一部の国と比べて慎重な姿勢を取り、コンプライアンスを重視しているのです」

とはいえ、Tilloはカナダの企業が履歴書の審査や面接の日程調整、候補者とのマッチングのためにAIをすでに利用していると述べています。企業はAIで採用活動のコストを削減し、外部の人材派遣会社に頼る必要性を減らしたいと考えているのです。

一方で、Tilloは1週間の勤務日数が減るなどの効果はないと考えています。Tilloの予想では、「労働時間が減るのではなく、その分の時間が別の業務に割り当てられる可能性が大きい」とのことで、それによって、2つのまったく異なる結果が生じる可能性があると彼女は言います。1つは業務の過剰負担を減らしながら、採用活動がより戦略的になること。もう1つは、生産性のさらなる向上を求められるようになることです。Tilloは次のように述べています。「企業で働く人々は、今より短い時間で今以上の成果を出すよう、さらに大きな重圧にさらされるリスクがあります。そしてその結果、ストレスや不安が大きくなり、バーンアウトが発生しやすくなる恐れがあります」

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