深刻化する人手不足に悩む日本企業にとって、外国人のアルバイトスタッフはいまや必要不可欠な存在となりました。製造業や飲食業をはじめ、さまざまな職場で外国人人材へのニーズが高まるなか、多国籍な従業員が働きやすい職場への取り組みは、企業の喫緊の課題といえます。

そこで、今回は日本でアルバイト経験のある3名の外国人の方を招き、日本で仕事探しをするなかで感じた課題や、実際に働いた感想などを聞きました。3人の会話から、外国人雇用へ向けたヒントが得られるかもしれません。


【参加者プロフィール】

オーエン…アイルランド出身。在日歴10カ月の語学留学生。都内のレストランでキッチンの洗い場を担当。

ローラ …フィリピン出身。在日歴4年の日本の定住者。以前に軽作業のアルバイトを経験。現在は多国籍企業で正社員として働く。

メルヴィン…フィリピン出身。在日歴 7カ月の語学留学生。語学学校に通う合間に、3つのアルバイトを掛け持ちしている。
 
※全て仮名


ーーまず、どのようなアルバイトをされてきたか教えてください。

オーエン 僕は都内のレストランで洗い場を担当しています。語学留学生なので、週に28時間の就労制限がありますが、そこでほぼ時間いっぱい働いています。

メルヴィン 僕は、3つのアルバイトを掛け持ちしています。一つは車部品の製造工場で、週2回の夜勤です。長時間で大変ですが、単純作業なのでだいぶ慣れました。

二つ目は、自宅の近くにある高級ホテル。レストランのビュッフェのサーバーや、外国人のお客様対応をしています。通いやすくて、まかないがあるのが魅力です。

最後が、東京ドームやビックサイトなどで行われるイベントの会場準備や後片付け。希望する日だけ出勤できて、給与の振り込みが早いので便利です。

ローラ 私は以前に倉庫で軽作業のアルバイトを経験しました。2カ月間の契約でしたが、かなりの力仕事で体力的にもたず、2週間程で辞めてしまいました。今は都内の多国籍企業で正社員として働いています。

ーー 来日してからどのように仕事を探しましたか? また、仕事選びで重視したポイントは。

オーエン 僕は様々な求人サイトから応募しましたが、最終的には同じ語学学校に通う知人が紹介してくれた職場に決めました。選んだというより、来日間もない時で日本語もできず、紹介以外でほかの仕事を得るのは難しすぎました。

メルヴィン 僕は、来日前に自国で見つけた人材紹介会社にホテルと工場の仕事を紹介してもらいました。言語面のサポートもありますし、先方と話が通っているので、採用までがスムーズでした。

イベントスタッフの仕事は、来日してからFacebookの求人ページで見つけました。求人情報が英語で記載されているので、利用している外国人は多いと思います。

重視した点は、大前提としてまだ基礎的なレベルの日本語でも受け入れてくれること。あとは、通勤に便利で、働く時間が合うことです。平日は語学学校に通うため時間は限られているので、学校が終わり次第、すぐに出勤できる職場を優先しました。日本語を学べる環境というのも大切ですね。それが僕が日本にきた理由なので。

ローラ 私も友人の紹介でした。その時は早めに就業できるところを探していたので、面接をしてからすぐに決めました。

「外国人歓迎」でも日本語は必須? 求人応募に行き詰まるわけ

メルヴィンの話を聞くローラとオーエン

ーー 知人の紹介やSNSの英語求人から応募されることが多いようですが、日本語の求人サイトやハローワークを利用されることは少ないですか?

メルヴィン そうですね。日本語の求人サイトも、Google翻訳などを使えばある程度、内容を理解できますが、結局、日本語の求人に「外国人歓迎」などの記載があっても、日本語をしっかり喋れることが前提にあると感じます。

というのも、「外国人歓迎」の記載がある店に面接希望の電話をしたことがあるのですが、お店の方が英語を話せず、僕も日本語が上手ではないので、話を進められませんでした。新宿のハローワークを利用して面接のオファーを頂いたこともありますが、先方に「面接官は英語ができないので、通訳の人と来てほしい」と頼まれ、行き詰まってしまいました。

働く現場で日本語が必須ではなかったとしても、採用担当の方とコミュニケーションがとれないと、僕らにとっては結局そこがバリアになってしまいます。

オーエン 僕も、日本に住む外国人向けの有名な求人サイトを利用したとき、似たような経験をしました。

そのサイトは、先方からの承諾があれば、電話のやり取りなしで面接設定ができるのですが、「英語OK」という記載がある求人に応募したにも関わらず、いざ店を訪ねると、外国人が来るとは誰も知らなかったような対応で……。サイト上で僕の日本語レベルも承知の上、面接を承諾されたはずですが、結局、英語で面接をできる人がいなくて採用は見送られました。

ローラ 面接までこぎつけて、「やっと仕事が手に入る」という期待があるからこそ、落胆が大きいよね。

ーー 実際の仕事内容は「外国人歓迎」でも、採用までのプロセスに言語の壁があるんですね。ほかに就業までにとまどった点はありますか。

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メルヴィン 言語面のほかは、アルバイトでも、就業のために必要な書類が多いことです。SNSで見つけた仕事は英語のオンライン面接だけでOKでしたが、ホテルと工場の仕事は、日本語の履歴書のほかに、銀行口座情報や、保証人関連の書類、在留資格認定証明書、社内のさまざまな契約書など、大量の書類を用意するのに苦労しました。

英語の契約書だとしても、内容について教えてほしいことがある場合、担当者に日本語で聞くしかない場面もありました。結局、どう質問すれば良いのかわからず、そのままサインしたこともあります。アルバイトに対して手続きがしっかりしているのは信頼できますが、前述の人材紹介会社の助けがなければ、すべての書類を自分で揃えるのは困難だったと思います。

外国人人材の雇用を加速させたいのであれば、口座開設など、就業までに必須となる条件の取得や書類の準備がもっと容易にできるよう、政府や企業に動いて欲しいです。

ローラ 私は面接官の方が日本人で、知人が通訳をしてくれたのですが、プロではないですし、自分の意図と違って伝わってしまうのではという不安はありました。

オーエン 米国発のレストランだからかもしれませんが、僕の経験はみんなの逆で、履歴書は英語でOKで、採用面接の際も企業側に通訳の方がいました。書類関連も、採用担当の英語が分かる方に聞きながら準備できましたね。

さらに、就業後はキッチンスタッフのLINEグループに招待されて、そこで直接、質問などを聞けるようにしてくれました。そのLINEグループには自動翻訳機能が適用されていて、英語で送った質問も日本語に翻訳されますし、日本語の返答も英訳してくれるので便利です。

メルヴィン そういった機能は活用した方が良いですよね。僕も、人材紹介会社の方が席を外した際は、Google翻訳アプリを使って企業の方と話をしました(笑)。

ーー 就業後はスムーズに仕事を覚えられましたか? また、そのために職場ができる工夫などがあれば教えてください。

ローラ 私は軽作業の仕事でしたが、作業の流れが書かれた資料などをもらえると、すごく助かったと思います。

その作業場では、様々な種類のバーコードを製品に貼ったり、領収書を規定の箇所にはさんだりと、一度では覚えられないくらい細かい指示がたくさんありました。もちろん、作業を教えてくれる人はいますが、製品によって作業内容が変わるので、教える内容に抜けがあることもあります。

言葉が通じないと間違えたときに余計に戸惑ってしまうので、必須とは言いませんが、簡単なものでも資料があると嬉しいです。

メルヴィン 確かに、僕がこれまで働いてきた職場も、だいたい「見た通りにやってください(日本語)」スタイルでした(笑)。

ローラ だから、すごく注意深く見ていました(笑)。教えてくれる方も、基礎的な英語や身振り手振りだけで私に作業を教えるのが大変そうで、その手間に対する躊躇から必要な情報が伝わってこないこともあるのではと感じます。

オーエン 僕の仕事は皿洗いという単純作業なので大きな課題は感じていませんが、周囲の日本人のアルバイトの方が、僕のカタコトの日本語を嫌がらずに、我慢強く理解しようとしてくれる姿勢にはいつも助けれています。質問しやすくなりますし、そうした対応のおかげで、職場にもすぐに馴染めました。

自国との働き方の違いに驚き!それも含めてアルバイトの醍醐味に

テーブルを囲んで話すローラ、オーエン、メルヴィン

ーー 職場で感じたカルチャーショックや、日本ならではだと思った点はありますか。

メルヴィン やはり、仕事中はすっごく静かにしていないといけないということですかね(笑)。

ローラ、オーエン それは同感(笑)!

メルヴィン ホテルのレストランですら、従業員がほとんど私語を交わさず、黙々と働いている姿に最初は衝撃を受けました。

表に立っている間は常に「お客様」を意識して、静かに、真面目に自分の仕事をする姿を見て、「僕は日本に来たんだ」と実感しましたね。賑やかな自国のフィリピンとの違いを肌で感じられたのは嬉しいですし、貴重なことです。

話しかけられることも少なかったので、働き始めた当初は、「避けられているのかな」と心配しましたが、働くうちに、仕事中は目の前の自分の仕事をキチンとこなしていくのが、同僚たちの働く姿勢なのだと気づきました。避けているわけではなく、「あなたも自分の仕事をして、わからない事があればいつでも聞いてね」という事だったんです。

他には、職場がどこもきれいに整頓されていることに驚きました。工場もレストランも、必要なものがどこにあるのかすぐにわかるようになっていて、とても効率的な職場の作られ方だと思います。

オーエン 実際に欧米の企業でも、TOYOTAなど日本企業の職場の最適化のノウハウがよく導入されていますよ。

ローラ 私はその「最適化」された画一性をたまに窮屈に感じる事もあります。同じ結果を得るにしても、自分のやり方ではなく、決まったやり方に従う必要があるということなので。各自のスタイルで仕事を進めることに対しての不寛容さが裏目に出ることもあるんじゃないかな。

あとはよく言われることですが、時間の厳しさには驚きました。作業を終えてすることがなくても、終業時間を過ぎるまでみんなその場にいますよね。

オーエン 僕は、自分の仕事を早く終わらせても、どんどん次の仕事が入ってくることに驚きました(笑)。  

何事も全力で取り組みたい性格なので、皿洗いを他の人より2倍早く終えることもあるんですが、早く終わった分、掃除や食材の移動など、次々と担当以外の仕事を頼まれるのです。

僕の国では、過労でストレスにならないように、仕事をがんばって早く終わらせた人はその場で少しゆっくりしていても何も言われません。しかし、日本では勤務時間中は常に手を動かしてほしいという文化があるんですね。

とはいえ、仕事が早いのは損ではなかったようで、始めて2カ月で、キッチンの仕事も手伝わせてもらえるようになりました(笑)。

ーー 日本の職場が他国に学べることもあるように感じます。最後に日本でアルバイトをして、ためになったことはありますか。

メルヴィン 僕の目標は、日本語や日本文化、日本の人々の生活を学ぶということだから、そうした意味ではこれまで経験したすべてのアルバイトがプラスになっていると思います。

学校の教室で日本語を学んでいるだけでは不十分で、そのまま帰国しても、大きな変化はありません。でも、アルバイトでの経験は、本当の意味で日本という国に適応できるようにしてくれると思いますし、それが僕のゴールです。

ローラ 私も短い間だったとはいえ、日本語に慣れるのには役立ったと思います。それに、日本の倉庫の様子や、そこで働く人々について知れたのも貴重な機会でした。

オーエン 僕もメルヴィンと一緒で、日本の方と生きた日本語を交わして、日本の文化を肌で感じられることが、アルバイトの醍醐味だと思っています。

ーー ありがとうございました

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