少子高齢化により、若い労働力が減少の一途を辿っている日本。コロナ禍を経た今、人手不足に追い討ちをかけるように、「外国人のアルバイト採用においても、売り手市場が加速している」と、新宿外国人雇用支援・指導センターで統括職業指導官を務める清田真裕美さんは話します。 外国人人材の雇用を確保・維持するために、企業がとるべき対策を、外国人の職業紹介や、外国人雇用を検討している企業からの相談を受け付けている同センターの清田さんに聞きました。


ーーまず、近年の日本における外国人のアルバイト雇用の状況について教えてください。

ウィズコロナの下で景気が持ち直してきた昨今、外国人のアルバイト採用においても売手市場が加速した印象です。特に建設業、飲食・サービス業などでは、外国人の方を雇用しないと職場が立ち行かなくなるくらい、人手不足が深刻化しています。

当センターに相談に来られる企業様も、「日本語があまりできなくてもよい」「時給をアップする」など採用条件を緩和され、なんとか外国人の方を雇用するための努力をなさっているのを最近は特に感じています。

「日本語の壁」を取り除くのが採用成功の鍵

インタビューに答える新宿外国人雇用支援・指導センターの清田真裕美さん

ーー厳しい状況のなか、外国人の方の採用を成功させるには、どのような工夫が必要ですか。

まず、採用条件として日本語を「必須」としない配慮が有効です。日本語を話せる方を雇いたいとおっしゃる企業様は多いですが、当センターに仕事を探しに来られる外国人の方はやはり日本語よりも共通語の英語の方が得意な方が多く、言語を壁にすると採用は進みづらくなります。最初はバックヤードなど、あまり日本語での会話を必要としないポジションから始めるなどしてみてはいかがでしょうか。

また、可能な限り候補者を言語面でサポートする姿勢が大切です。外国人の方からの応募に対して、応募書類は英語OKにするとか、募集要項や面接の言語に「やさしい日本語」を意識的に使用するとか、無料の通訳アプリを活用するなどの工夫をされると良いでしょう。

面接に関しては、普段は日本語を話せても、面接で向き合うと緊張して言葉が出てこないという方もよくいらっしゃいます。面接での質問は条件面の確認など必要項目に絞り、「やさしい日本語」でわかりやすく尋ねることを心がけてみてください。

定着には外国人スタッフを「育てる」意識を

インタビューに答える新宿外国人雇用支援・指導センターの清田真裕美さん

ーー採用した外国人スタッフに定着してもらうためにはどうすれば良いですか。

当センターに来られる外国人の方は、職場の人間関係的なことよりも、賃金や時間、場所といった条件面を理由に離職されることが多いです。シフトの希望が通るかなども重要ですが、長く働いても賃金が上がる見通しがない職場ですと、そこが不満の元となり、より条件の良いところへ早々に移ってしまうことが少なくありません。

「ここまで出来る ようになればいくら」というように、昇給の条件が明確かという点にはシビアです。アルバイトだとしても、そうした面は整備していくべきでしょう。あるファストフード店では、店員のほとんどが外国人ということもあってか、職場にスキルアップ表を張り出し、各スタッフの現在のレベルやスキルアップ後の給与をわかりやすく掲示するなど、モチベーション維持の工夫をされています。

また、外国人スタッフの顔と名前を一致させて、ちゃんと名前で呼ぶなども心がけたいところです。知らない国で一生懸命働かれている外国人の方にとって、職場で大事にされていると感じられるのは大切なことだと思います。日本人か外国人かに関係なく、職場で尊重されていて、段階を踏んでいけば賃金が上がっていくということがわかれば、離職率は下がるのではないでしょうか。

ーー確かに、日本ではアルバイトの昇給条件があいまいな場合が多いですね。ほかに定着に成功している企業の特徴はありますか。

言語レベルよりも候補者の適性等を見て採用し、採用後は「育てる」意識を持つことだと思います。

ある建設業の企業様は人手不足が深刻で、日本語があまり喋れない方を採用されました。現場の反対を押し切る形だったようですが、その方が大変真面目に働く姿を見て、現場の方の考え方も変わったようです。

最終的には彼は正社員に登用され、ゆくゆくは、彼をリーダーにして外国人人材の雇用を促進していきたいと考えていらっしゃいます。本人もますますやる気が湧いているようです。同じように、外国人の一人をリーダーに据えることで、外国人スタッフと円滑にコミュニケーションを図ろうと取り組んでいる企業様もいらっしゃいます。

いずれにしても、採用や定着に成功している企業様の大半は、採用や昇給に際して「日本語」を条件にせず、「言語は働くうちに上達する」と考えていらっしゃいます。

ーー文化や風習の違いによって外国人の方が職場に求める条件は異なると思いますが、どのような点に配慮すべきでしょうか?

母国の文化的な休暇期間(旧正月)や冠婚葬祭の際に、まとまった休みが取れる職場を希望される方は多いですね。ある企業様では、同じ国籍の方を多く雇っているため、その国の宗教の休暇のときには従業員が一斉に休みをとって帰国されたそうです。それでも代表の方は「文化なので尊重すべきですよね」とおっしゃっていました。

また、休憩時間を宗教的なお祈りの時間に合わせるなどの配慮をされている企業様もいらっしゃいます。女性のヒジャブの着用や、肉やお酒などの扱いについても宗教的な決まりがありますが、お酒を扱うこと自体がNGという方もいれば、飲まなければOKという方もおられ、宗教観や文化への捉え方は人それぞれです。

許容範囲はあると思いますが、最初から排除はせず、まずは候補者の考えを聞いて前向きに検討して頂けたらと思います。

日本の事業継続の危機。有能な人材は国籍問わず採用を

インタビューに答える新宿外国人雇用支援・指導センターの清田真裕美さん

ーーアルバイトにおいても、多様性を受け入れ、互いを尊重し合う採用工程や職場環境が求められているのですね。

はい。ひと昔前は「外国人=安い労働力」というような考えをお持ちの方もいましたが、上から目線はもう通用しません。今の日本において外国人の方は必要不可欠な存在であり、外国人の受け入れ体制を整えていくのは、企業にとってむしろ喫緊の課題のはずです。

例えば、日本の建設業は高齢化が進んでおり、昨今、現場作業員として若い方を雇うのは難しい状況です。前述した建設業のスタッフのように、20代、30代の人材を外国人から採用できるのは企業としても貴重なことなのです。

また、今後の世界情勢の変化により、日本に働きに来てくれている外国人人材が減っていくことも考えられます。実際に当センターの利用者で数年前まで最多だった中国の方は、国の経済成長により日本でアルバイトをする必要性を感じない方が増えています。これは、近年の多数を占めている東南アジアなどの国々が豊かになるにつれても言えることでしょう。

ーー外国人の方が働きに来てくださっているうちに、積極的に採用を進めていくべきということでしょうか。

はい。日本の現状を直視すると、冷静に考えても危機的状況です。人手不足の影響は飲食やサービス業などに限った話ではなく、日本の中小企業が持っている優れた技術が、人手不足のために生かしきれないということが既に起きています。

メディアでも報道されているように、日本の若い方はどんどん減少しており、働く若い層や優秀な人材ほど、海外への流出が進んでいます。事業や技術の継承のために人材を採りたくとも、グローバルな採用市場で日本の中小企業が勝とうとすると難しい面もあるのです。

ですので、後継者不足に悩む前に、早めに優秀な外国人人材の方の採用を進めないと、日本にあるすばらしい事業自体がすたれてしまうことにもなりかねません。

今の日本においては、男女や年齢はもちろん、国籍も関係なく、良い人材は必要な戦力として積極的に雇用し、そこから育てるという意識が大切です。


新宿外国人雇用支援・指導センターの皆さん

新宿外国人雇用支援・指導センターについて

英語と中国の通訳、在留資格相談等の専門アドバイザーが常駐して、永住者、定住者、日本人の配偶者等、家族滞在の方、アルバイトを希望する外国人留学生などを対象に、職業相談や紹介を行っています。また、外国人従業員の在留資格や雇用管理の相談や、外国人の雇用、定着のためのアドバイスが受けられます。

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