Owned Media Recruiting 実践企業事例 SBCメディカルグループ経営戦略本部 採用部 部長 時田志保氏(右)、採用部 採用広報グループ 城田唯氏(左)

2000年に「湘南美容外科」からスタート。約20年で、自由診療の美容外科や審美歯科のみならず、保険診療の整形外科や眼科など幅広く、全国100院以上を展開するクリニックとなったSBCメディカルグループ。

同社は採用戦略として、創業者である相川佳之代表の経験や思いからなる「三方良し」の理念に共感する人材とのマッチングを目指す「理念採用」を掲げている。ここ数年で浸透が進んだとはいえ、まだまだ美容医療に関する世間の認識が十分ではないなか、どのような採用を展開しているのだろうか。理念採用の思いや具体的な施策について、経営戦略本部 採用部 部長の時田志保氏と、採用部 採用広報グループの城田唯氏に聞いた。

SBCメディカルグループ経営戦略本部 採用部 部長 時田志保氏(右)、採用部 採用広報グループ 城田唯氏(左)
時田志保氏(右)。経営戦略本部 採用部 部長。2012年に受付カウンセラーとして入社。クリニックでの主任、地方および海外店舗の立ち上げを経験。2019年よりマネジャーとして神奈川から岐阜までのエリアを担当し、各クリニックの業績・お客様満足度・スタッフの働きがい向上に努める。2021年1月より採用部に異動し、新卒中途問わず現場での経験を活かし理念に即した採用に取り組んでいる。

城田唯氏(左)。採用部 採用広報グループ。2009年に出版取次会社へ新卒で入社し、営業やデータ分析業務を経験した後、2017年にSBCメディカルグループに人事アナリストとして入社。採用にまつわる数値分析や、オウンドメディア・求人媒体の運用に従事し、現在は採用広報担当としてオウンドメディアを中心に、社内外に向けた企業ブランディングや広報活動をメインに担当している。

採用時から「理念」を伝え、同じ判断軸を共有する

──採用サイトでは、「究極の三方良し」という言葉を使って「理念採用」を訴求されています。この理念採用について教えてください。

SBCメディカルグループ経営戦略本部 採用部 部長 時田志保氏

時田:SBCメディカルグループは「究極の三方良しを実現し、世界一社会に貢献する伝説のクリニックになる」ために成長を続け、約5000人(2021年9月時点)の社員がおります。そして、「お客様良し・スタッフ良し・社会良し」の三方良しこそが、弊社の理念であり行動規範のもとになるものです。

ここに至るには、創業者である相川の経験として、キャリアや個人のスキルだけを重視した採用では入社後にハレーションが起きてしまった、そして、社員がバラバラな方向を向いてしまい離職者が増えてしまったという苦労があったようです。ゆえに、SBCメディカルグループが未来に向かって進んでいくためには、全社員が共感できる理念こそが大切だと。そこから始まったのが「理念採用」です。

──理念採用のポイントとして、ミッション、ビジョン、バリューを訴求されていますね。

湘南美容クリニックの理念を紹介するページのスクリーンショット
時田氏はSBCメディカルグループを船にたとえ、理念はその船を進めるための動力になると語る

城田私たちのことを理解いただくために、ミッション=使命、ビジョン=将来像、バリュー=行動指針として分かりやすく伝えています。また、「三方良し」という大きな理念だけでは、業務に落とし込むのが難しいと感じる社員もいますので、バリューを15箇条の行動指針にまとめています。理念を実現するための日々の行動、その指針となる15箇条ということですね。

例えば、「売上げを達成する」という明確な目標に対して、何をするかという手段が人によって違うことがあります。お客様にどんどん提案したい人もいれば、寄り添うことで売上につなげる人もいる。そんな判断が難しいシーンおいても、一つひとつの行動を理念に沿って具体化して自主的に動くために、同じ判断軸を持てるようにしています。

ボロボロの「クレド」に理念浸透の証が宿る

SBCメディカルグループ経営戦略本部 採用部 部長 時田志保氏

──とはいえ、求職者への共感はもちろん、全社員に理念を浸透させるのは難しいことだと思います。どのような取り組みをしているのでしょうか。

時田:私は、現在は採用部のポジションにおりますが、お客様の対応や施術方法の説明、見積もり作成などを担当する受付カウンセラーとして入社しました。そのキャリアの経験から、「三方良し」という理念自体に共感できない、意見が異なるという求職者や社員はほとんどいないと感じています。ただ、捉え方、同じ解釈ができるかが重要な問題になってくると思います。

城田:例えば、弊社で大切にしている考え方に「先客後利(まずはお客様を大切にし、利益は後からついてくるものという考え方)」があります。この解釈や実践に関しても人によって差異が出てきます。お客様にとって一番いいと思える施術を弊社から積極的にお伝えすることが大切なのか、もしくはお客様の意見を重視して弊社からの積極的な提案は控えるのか。

そういった細部を同じように解釈できるようになるためにも、採用サイトではスタッフインタビューのコンテンツを充実させています。三方良しや先客後利を体現する社員の日常や業務などをインタビュー記事として掲載し、「つまり、こういうことだよ」という実例を通して理解してもらえるように工夫しています。

時田:私たち社員は、常に「クレド」が記された小冊子を携帯していて、朝礼で読み合わせたり、判断に困ったときに見返したりしています。ここには15箇条の行動指針も載っています。

クレドが記された小冊子「実力の差は努力の差、実績の差は責任感の差、人格の差は苦労の差」
時田さんのクレドは、読み込まれてボロボロに

現場への共感につながるコンテンツに

SBCメディカルグループ採用部 採用広報グループ 城田唯氏

──さきほどのお話では、社員インタビューに力を入れていらっしゃる印象を受けました。このコンテンツを含めて、「理念採用」を正しく求職者の方々に伝えるための情報発信については、どんな考えをお持ちですか。

城田:「人」を通して理念を伝えていきたいというのが、私たちの考えです。面接で「理念に共感しました」と言うのは簡単で、誰にでも言えます。さきほど時田も申したように、そもそも異を唱えるような内容の理念ではありません。だからこそ、きちんと理解していただくためには、社員が理念をどう受け止めて、どう行動に落とし込んでいるのかを、実際の「人」を通して伝えることが大切になってきます。

時田:まず、弊社をテレビコマーシャルで知ったという方が多く、やはり代表の相川の印象は強い。その代表自身から理念を伝えるという方法があります。そこは、代表メッセージとして、テキストと動画で伝えています。

さらに、例えば行動指針の一つである「ゴールからの逆算(常にゴールからの逆算思考で考え、時間の無駄を省く)」にまつわり、「目標を立て、その目標に向けてこんな行動をして、その結果、社内での評価やお客様から喜びのお言葉をいただいた」といった理念を体現する社員の実際の姿なども伝えています。そこから弊社やご自身の入社後のイメージをより鮮明に感じていただけるのではないでしょうか。

より多くの社員が露出することで様々なケースを表現し伝えることができるはずです。そういった意味でも、インタビューコンテンツはもっと充実させる必要があると考えています。

──インタビュー記事など、採用サイトのコンテンツ制作はどんな流れで進めているのでしょうか。

城田:現在は、私が企画から制作まで全てやっています。最近では、新型コロナウイルス感染症に関する話題を取り上げました。神戸市で行われた国内初の産学官連携モデルによる「大規模ワクチン接種」での弊社の取り組みなどですね。

インタビュー対象となる社員は、採用部の「こういう人に出てほしい」というブランディングを念頭に置いた条件と、現場のマネジャーの評価をマッチングさせてピックアップしています。あとは本人の意思ですが、幸い「出たくない」という反応は今のところありません。実名記載については抵抗のある方もいるので、仮名も選べるようにしています。

カウンセラーの山口氏のインタビュー記事のスクリーンショット
カウンセラーの山口氏の記事。お客様に満足していただくカウンセラーになるために歩んできたキャリアや考え方が紹介されている

時田記事については、こちらから導線を強化していることもありますが、応募者にもよく読まれています。例えば、社員の声を紹介するインタビューに掲載されている山口という受付カウンセラーの記事は、「入社後に山口さんみたいになりたくて入りました」という声がすごく多くて。入社後のモチベーションにつながっていることを実感しています。

城田:社員の声を率直にお伝えするインタビュー以外にも、キャリア形成や思いに迫る内容や、社員へのアンケート調査や社内イベントなどベースにして会社の裏側を伝えるもの、各職場の雰囲気を楽しく伝えるクリニック潜入レポートといったコンテンツがあります。

自分で取材をしていると、「人を救いたい」「人の役に立ちたい」という意思を美容医療で実現している社員にたくさん出会います。そういう気持ちをすくい上げられるようなコンテンツをしっかり作っていくこと。そして、記事を見て共感していただける方、私たちの気持ちと同じベクトルを持った方々に来ていただけたら嬉しいです。

ゼロをプラスにする美容医療のやりがいを発信する

SBCメディカルグループ経営戦略本部 採用部 部長 時田志保氏(左)、採用部 採用広報グループ 城田唯氏(右)

──採用サイトは今年度末にかけてリニューアルを予定されているそうですね。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、採用をめぐる状況も大きく変わってきていると思います。今後の採用計画についてお聞かせください。

城田:弊社は昨年に「2020年にグループ100院」という目標を達成して、今後は2035年までに1000院を展開し、日本一社会に貢献できる医療グループになることを目指しています。自由診療の美容外科や審美歯科のみならず、保険診療の整形外科や眼科など10以上の診療科目を手がけるようになりました。社員もこの5年ほどで、約2000人から約5000人と倍以上になりました。

それらを行動指針にもある「ゴールからの逆算」で考えると、今の採用スピードではとても人材の確保は追いつかないのが正直なところです。マッチングの改善、採用の歩留まり率の向上など、やるべきことがたくさんあります。

また、コロナ禍への対応としてオンライン面接を導入していますが、全体から見ると大きな影響はありません。従来行っていたクリニック見学については、オンライン見学会などでフォローしていきたいと考えています。

時田:10年前と比べると、美容医療に対する世間の捉え方も大きく変わりました。今、力を入れているのが、看護師と受付カウンセラーの新卒採用、男性スタッフの採用です。2022年4月入社の看護師新卒採用については、約600名のエントリーがあり、すでに50人以上の内定者が出ています。

卒業後は一般的な病院に行くものだという思い込みがあった看護学生の方も、美容医療の意義を理解してくれて、志望してくださっている。世の中がすごく変わってきていることを感じます。

──昨年の採用数も1000人以上、その半数は看護師採用だと伺いました。医師や看護師など有資格者の採用においては、特定の層にどういった形で訴求していくかなど難しい面がありそうですね。

城田:はい。その点にはかなりの課題感を持っていまして、今度のサイトリニューアルでもそこを見据えて改善をかけていくつもりです。医師と看護師では、仕事に対する指向性も違うし、もちろん受付カウンセラーのような職種との指向性も違います。つまり、訴求ポイントが大きく異なっているにも関わらず、同じサイト内で同じコンテンツを見せているという状況で、非常に難しい問題です。

ただ変わらずに訴求していきたいのは、美容医療への思いです。美容医療は一般的な医療のように病気を治す、つまりマイナスをゼロにするものではありません。ゼロをプラスにする、健康な方にプラスの価値を提供するのが私たちの医療です。

これまでの応募者からは、採用サイトや説明会など弊社のオウンドメディアリクルーティングを通して、美容医療のイメージが一新されたという反応もいただけています。そのような反応を励みに、目標に向けて、また美容医療の未来に向けて、私たちの仕事の意義ややりがいをしっかりと打ち出していきたいです。

※ 所属部門・役職などは2021年9月当時のもので、現在と異なる場合がございます。