エンジニアの採用には現場を巻き込む
選考を重ね、候補者のスキルを見極めた上で内定を出したにもかかわらず、企業とエンジニア双方のミスマッチが起きることがあります。特に、現場の社員が採用に関与していない場合はそのようなミスマッチが起こりやすいと言えます。
採用活動は人事担当者が主導となって進めることが多いでしょう。求人票の作成や書類選考、一次面接などは人事担当者が行い、最終選考の段階で現場の責任者が参加するような流れをとる企業もまだまだあります。
しかし、エンジニア採用を成功させるには、選考の初期段階から現場の社員に参加してもらうべきです。候補者の技術的なスキルや能力は、現場の社員がチェックした方が確実といえます。候補者の立場から見ても、過去の技術的な課題解決に対する評価や見極めが行われないことはネガティブに映る場合があります。
社員主導型の「スクラム採用」はエンジニア採用にも効果あり
とはいえ、いきなり現場を巻き込んで採用活動を進めようとしても、うまく連携が取れなかったり、採用業務に協力してもらえなかったりする可能性があります。事前に全社で採用に取り組めるような仕組みを設計しておきましょう。
最近では、社員主導型の「スクラム採用」が注目されています。これは、経営陣や人事だけが主導して採用活動を行うのではなく、現場の意見を取り入れ、全社員が一丸となって採用活動に取り組む方法です。メリットとして、エンジニアを含めた採用全般に対して社員が協力的になってくれる点が挙げられます。
スクラム採用を進めるカギは、積極的な社内での情報共有です。たとえば「Slack」のようなコミュニケーションツールを使い、社内で「スクラム採用チャンネル」を作って運用している企業もあります。チャンネル内では、採用を盛り上げるために各部署が意見を交わします。
◆情報共有の例
・人事が採用状況を共有する
現在の採用状況について人事が具体的に共有することで、社内の意識が高まります。
例:「今期は特にフロントエンドのエンジニア採用を強化しています。○期に○名の採用が目標です」
・情報発信後は社員に拡散を協力してもらう
採用サイトを更新したり、ブログやSNSに投稿したりした後は、社員へ拡散の協力を呼びかけます。
例:「採用ブログを更新したので、よかったらシェアしてください」
・新しいメンバーを紹介する
入社した社員のチームメンバーや上司から、新しいメンバーを紹介してもらいます。全体に周知することで、入社後も社内でフォローしてもらいやすくなります。
例:「技術部にAさんが入社しました。フォローアップの担当者はBさんです。皆さんもサポートをお願いします」
日ごろから採用にまつわる情報が入ってくることで、人事部署以外も採用活動に対して主体的に考えてくれるようになります。
もちろん、いきなりスクラム採用を実施しようとしても、最初のうちは浸透しないかもしれません。軌道に乗るまでは人事部や経営陣が積極的な情報発信に努め、社員に協力を促すようにしましょう。
企業文化に合うエンジニア採用には、採用ピッチの公開も
採用活動では、応募者のスキルだけではなく、自社の企業文化に合致する人材か見極めることも重要です。
多くの求職者に自社のカルチャーを伝えるなら、採用ピッチ資料(会社紹介資料)をWeb上に公開するのも一つの手です。資料には各事業の概要はもちろん、会社の理念やプロダクトチームの紹介などをまとめておきましょう。CTO(最高技術責任者)からのメッセージを入れるなど技術面での思想やカルチャーに触れておくと、採用ターゲットであるエンジニアに響きやすくなります。
自社に合うエンジニアを採用するには、スキルとカルチャーの両面から判断する必要があります。うまくマッチしないまま入社してしまうと、お互いにとって不幸な結果になるでしょう。まずは社内の体制づくりから始めることをおすすめします。
<取材先>
ワミィ株式会社 代表取締役 伊藤 和歌子さん
新卒では電気通信企業にてシステムエンジニアとして勤務。2009年よりセキュリティソフトメーカーに転職し、人事部門責任者として採用・育成・制度設計・全社プロジェクト統括など、幅広い分野を担当。2016年にワミィ株式会社を設立したのち、デジタル人材やエンジニア専門の人事・採用コンサルティングや採用支援(RPO)のほか、従業員のITリテラシー向上施策の実行、女性活用支援などを行う。
TEXT: 成瀬瑛理子
EDITING:Indeed Japan +ノオト