中小企業による初めてのエンジニア採用 長く勤めてもらうには?


近年、ITエンジニアは売り手市場が続き、採用が難しい状況となっています。その一方で、「せっかくエンジニアを採用したのに、すぐ辞めてしまった」「期待した成果が出なかった」など、入社後のフォローがうまくいかず失敗するケースも多いようです。IT人材の雇用に慣れていない中小企業は、どのような対策を講じればよいのでしょうか。
 
「そもそも、一つの会社に長く勤めてもらおうという考え方を変えるべきです」
 
そう話すのは、IT人材の採用および雇用環境に詳しいエンジニア、大和賢一郎さん。エンジニアの離職理由や人事評価、よくある失敗例など、経営者および人事担当者が注意すべきポイントについて解説していただきました。

 
 

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エンジニアにとって、3~5年で職場を変えることは当たり前


――「ITエンジニアの採用が難しい」「雇用しても定着しない」と悩んでいる人事担当者は多いようです。エンジニアはどういった理由で離職するのでしょうか?
 
大きく2つのパターンに分かれます。1つは、「スキルに見合った仕事がなく、物足りない」という人。フリーランスとしてやっていけるレベルの技術を持っているエンジニアは、やがて独立します。
 
もう1つは、脱落していくパターンです。エンジニア業界では「多重下請け構造」が浸透しており、ピラミッドの下位にいる人は低賃金や長時間労働など、労働環境の悪さを理由にどんどん辞めていきます。二極化が進んでいると言っていいでしょう。
 
――雇用する企業側には、どのような問題点があるのでしょうか? よくある失敗例があれば教えてください。
 
「社員はサボるから、タイムカードで監視しなければならない」、「1分でも遅刻したら減給」といった制度を設けている企業は、今でも少なからず存在します。そういった環境には、エンジニアはマッチしないでしょう。
 
優秀なエンジニアは、そうではないエンジニアに比べて10~100倍の生産性があると言われています。
 
「新卒エンジニアが1カ月かけても作れなかったシステムを、ベテランエンジニアが3日で作った」
 
「システム障害が発生し、ECサイトがストップした。新卒エンジニアは1週間かけても原因を突き止められなかったが、ベテランエンジニアは数時間でエラーを発見し、修正できた」
 
そんな事例は山ほどあるのです。優秀なエンジニアが1分遅刻したからといって、生産性は大きく変わらないでしょう。「それでも遅刻だから、評価を下げる」というような会社には、行きたいとは思わないはずです。
 
――なるほど。では、エンジニアの離職率を下げるには、どうすればよいのでしょうか?
 
IT関連企業は、他の業界と比べて浮き沈みが激しいのが実情です。今は急成長しているITベンチャーも、5年後にはどうなっているか分かりません。優秀なエンジニアたちは、そういった状況を予測しながら動いています。エンジニアが3~5年程度で辞めるのは普通の感覚である、と認識しておかなければなりません。
 
――一定期間が経てば離職するという前提で雇用しなければならない、ということですね。とはいえ、採用して数カ月で辞められては困るのではないでしょうか。
 
それは、エンジニアに何を求めるのかによって変わります。
 
Webプログラミングのソースコードを書くエンジニアの場合、勤続期間はそれほど重要ではありません。なぜかというと、人が変わっても引き継ぎがうまくいくからです。
 
「Excelや紙で管理していた社内の業務を効率化したい」という要望は、どの会社でも概ね同じです。したがって、そういったシステムの構築経験があるエンジニアは、ソースコードを見ればすぐに分かります。エンジニア同士で話せば理解できるので、1~2日程度で引き継ぎが終わるのです。極端に言えば、3カ月ごとに社員が入れ替わりバトンリレーのような状態になったとしても、システムを動かし続けることはできます。
 
数カ月で辞められてしまうと困るのは、会社のITを5年、10年のスパンでどう改善していくか考えられる人、つまり経営者クラスのエンジニアです。そういったエンジニアを採用し、長く続けてもらうには、社長との信頼関係を築けるかどうかがカギとなるでしょう。小手先のテクニックではなく、経営者としての力量が問われることになります。

 
 

中長期的な視点でエンジニアを生かせる組織を考える


――中小企業が初めてエンジニアを雇用する場合、どのような人事評価制度を設ければよいのでしょうか?
 
エンジニアが評価に対して考える最大のポイントは、給料です。いまはネットで検索すれば「これくらいのスキルや経験があるエンジニアなら、月いくら」と、自分の評価額が分かるようになっています。したがって、「もし今月辞めたとしても、来月○○万円は稼げる」という目途が立てられるのです。
 
「今期の目標に対する自己評価を100点満点で書いてもらう」「言われたことだけではなく自ら提案し、会社の利益に貢献しているか評価する」といった一般的な評価指標を考えるより、金額について話した方がよほど現実的です。
 
――「エンジニアが重視する評価=給料」ということですね。では、仕事のやりがいや楽しさなど、精神的な満足度を上げるにはどうすればいいのでしょうか?
 
アナログなヒューマンスキルは、人事担当者や経営者が得意な部分でしょう。「なんとなく不満そうにしているな」と感じたら、1on1ミーティングや人事面談など、コミュニケーションを取って解決できるはずです。
 
ただし、技術的な面で満足度を上げるには、専門的な知見がないと難しいかもしれません。よくあるのが、古いシステムを使い続けている企業におけるエンジニアの不満です。
 
エンジニアが「これからはクラウドだと思うんですよ」と提言しても、経営者は「今のシステムを動かすための保守をやってもらわないと、売上が立たないし困る」と言う。そういう経営者は、理解が足りていません。
 
「それなりに給料を出していたけど、やっぱり辞めちゃったな」という経験を繰り返し、「ウチは定着しないような組織なのか。中長期的な視点で、エンジニアを生かせる組織改革を考えないといけないな」というレベルまでいけば、徐々に変わっていくでしょう。しかし残念ながら、そのレベルに達していない中小企業がまだまだ多いのです。

 
ミーティングをする女性

 
 

経営者も人事担当者も、ITのことを勉強するべき


――中長期的な視点で見た場合、中小企業はどのようなエンジニア採用計画を考えればよいのでしょうか?
 
エンジニアを採用したい中小企業は、「これまでの事業で稼いだお金やノウハウと、最新のIT技術を掛け合わせて、さらに成長していきたい」と考えているはずです。であれば、新しい人材をどんどん入れ替えていくほうが良いのではないでしょうか。
 
エンジニアに任せたい業務内容にもよりますが、長く働いてもらうことが必ずしも正しい選択とは言えないと思います。
 
――今後エンジニアを雇用する経営者・人事担当者は、どういった姿勢が求められるでしょうか?
 
ITのことをもっと勉強しましょう。この一言に尽きます。
 
社員教育などで、「社員一人ひとりが経営者の視点を持て」という話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。逆も同じです。これからの経営者は、自分の専門領域だけではなく、ITの領域に興味を持ちながら勉強していかないと一人前にはなれない。そう考えるべきでしょう。
 
あとは、「あの会社出身のエンジニアは凄いよね」といわれるような企業を目指すべきではないかと思います。たとえばGAFA出身のエンジニアといえば、それだけでブランドがついている優秀な人材という評価になるでしょう。そうした世界的企業と肩を並べるのは難しいかもしれませんが、長く勤めてもらうことを考えるより、企業としてのブランド力を高める方向へシフトチェンジするべきではないでしょうか。

 
 
 

<取材先>
Profile
大和賢一郎(やまと・けんいちろう)
ITエンジニア
 
1977年生まれ。IT・Web業界での実務経験23年(正社員16年、フリーランス7年)。フルスタックで上流から下流までこなすプレイングマネージャー。サーバサイドを中心にインフラからフロントまで幅広く手を動かす。東京にてITシステム開発やコンサルティング案件に対応中。著書に「小さな会社がITエンジニアの採用で成功する本(日本実業出版社)」などがある。
 
TEXT:村中貴士
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

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