エンジニア採用をする企業が増えた理由
――近年、多くの企業がエンジニア採用を強化しています。その理由を教えてください。
すべての産業において、ソフトウェアの重要性が増したことが大きな理由かと思います。これまでは、省力化やコスト削減を目的にITが使われてきましたが、ここ5~10年間でITがないと成り立たない産業が増えてきました。IT需要が高まるなか、外部にシステム開発を委託した状態では限界がきてしまうため、エンジニアを雇用して自社で開発・運用をしていく企業が増加したと推測されます。
――現在のエンジニア採用市場は、どのような状態なのでしょうか。
ここ数年で急激にエンジニアが少ない状態、つまりエンジニア採用が難しい状況になりました。採用を考える企業の増加や、一部の大企業によるエンジニアの大量採用が行われるなかで、エンジニアを採用したくてもできない中小企業が多く存在します。
優秀なエンジニアは大企業の安定性にはさほど惹かれず、企業への共感性や自身が成長できる環境であるかを重視する傾向にあります。そういった希望に沿う企業であれば、たとえ会社の規模が小さくてもエンジニアに選ばれるでしょう。実際に、一部上場しているような大企業よりも、マザーズ上場規模であるスタートアップから成長したような会社が一部エンジニアに好かれていることも多いんですよ。
また、大企業から中小企業に転職するエンジニアも近年増加しています。彼らが転職先として選ぶのは、しっかりとエンジニアを評価してそれに見合う待遇を用意してくれる会社です。大企業にない待遇や意思決定までのスピードを求めて、スタートアップ企業もしくはスタートアップから成長した中小企業を選ぶエンジニアも増加しています。
エンジニア採用の肝は「魅力を伝えること」
――採用に苦戦する企業のために、解決策を教えてください。
シンプルなことですが、採用に苦戦するのは「魅力の乏しさ」が大きな原因として挙げられます。たとえば、恋愛や婚活においても、意中の相手に振り向いてもらえない場合は、自分の魅力を相手に伝えきれていないケースが多いですよね。エンジニア採用も考え方は似ており、彼らにとって働きたい会社だと感じてもらえるかが採用を左右する肝になるのです。そのため、求めている人材に魅力を感じてもらえるように工夫する必要があります。
魅力を伝えられていない理由は2つあります。1つは、魅力はあるけど伝えきれていない「発信方法」に問題があるケース。もう1つは、企業自体に魅力がないケースです。後者は自社のアピールポイントの見直しを図らない限り、エンジニアが集まらず、たとえ採用できたとしても定着せずにすぐ退職してしまう可能性があります。
――エンジニアが感じる、企業の「魅力」とは?
給与・福利厚生・職場環境といった条件面も重要になってきますが、より重視されるのが「企業理念」や「会社のビジョン」です。会社は人生の大半を過ごす場所だからこそ、誇りを持てる仕事ができる場所なのかを判断しているエンジニアが多いです。極端に言えば、彼らは「給与が良くても、気に入った仕事ではない」と感じている場合には、将来的に退職してしまう可能性が非常に高いんです。優秀な人材を採用して会社全体で成長するためにも、企業理念やビジョンの共感性を高める必要があります。
エンジニア採用をする前に、まずは社内の見直しから
エンジニア採用の需要が高まる状況下で、優秀な人材を獲得するのは困難な側面もあります。だからこそ、採用したい人材に自社の魅力を伝えていくことが肝心です。具体的な採用の手法を検討する前に、まずは企業理念や会社のビジョンといった根幹に関わる部分を見直しましょう。
<取材先>
及川卓也さん
Tably株式会社代表。大学卒業後、日本DECに就職し営業サポート、ソフトウェア開発、研究開発業務に従事。1997年にMicrosoftへ転職し、Windows製品の開発に携わる。2006年からはGoogleでエンジニアリングマネージャーとして、Chrome、ChromeOS、Google日本語入力のなどを担当。その後、Incremestsでのプロダクトマネージャーを経て独立。2019年1月にTably株式会社を設立した。
TEXT:山本杏奈
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 +ノオト