拘束時間の法的定義とは 労働時間との違いは?

拘束時間の抽象的なイメージ

仕事における「拘束時間」とは、どのような時間を指し、企業はどこまで介入できるのでしょうか。拘束時間の法律上の定義や労働時間との違い、例外が認められるケースなどを労働法を専門に扱う弁護士の平野潤さんに解説していただきました。

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拘束時間とは

拘束時間とは、企業の拘束下にあるという意味で、下記の時間を合わせた時間を指します。

  • 実労働時間(実際に労働した時間)
  • 休憩時間

「就業規則などで定められた始業時間から就業時間までの時間」に限定されるものでなく、時間外労働(残業時間)も含まれます。
 

◆休憩時間が労働時間とみなされる場合とは

休憩時間が労働にあたるかどうかは、企業の指揮命令下に置かれているかどうかによって異なります。仮に就業規則などで休憩時間を定めていたとしても、その時間の全部または一部が企業の指揮命令下に置かれている場合は、労働時間とみなされる可能性があります。
 
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拘束時間に含まれる労働時間として認められるもの・認められないもの

就業時間の中には、移動時間や朝礼など、労働時間かどうかを判断しづらいケースがあります。実作業に従事していない時間が労働基準法上の労働時間にあたるかどうかは、「企業の指揮命令下に置かれているかどうか」という観点から判断します。
 
このような観点から、それぞれのケースを見ていきましょう。

 

◆移動時間(営業職などの場合)

就業規則などで定められた所定労働時間内の移動は、下記の理由から企業の指揮命令下に置かれていると判断され、労働時間と認められる可能性が高いです。

  • 業務上の必要性から企業の指示に従って行われるべきものである
  • 企業から業務上の指示や連絡があれば、移動中でも従う必要がある

 

◆移動時間(出張の場合)

・労働時間と認められる可能性が高い

PCで書類作成を命じられるなど、移動時間中に業務を行う必要がある場合
 

・労働時間と認められない可能性が高い

移動時間中に業務を行う必要がなく、自由に過ごせたり、食事や睡眠をとることが認められている場合
 

◆業務時間前の朝礼

・労働時間と認められる可能性が高い

  • 朝礼の参加が業務命令となっている場合
    朝礼の参加が業務命令として明確に規定されておらず、暗黙の了解として職場に浸透している場合も該当します。
  • 朝礼時に業務指示が行われる場合

 

・労働時間と認められない可能性が高い

朝礼の参加が任意であり、参加しなくても従業員が不利益を被るようなことがない場合
 

◆始業前・終業後の着替え時間

事業所内の更衣室において、所定の作業服に着替えることが業務命令となっている場合は、事業主の指揮監督下に置かれると判断され、労働時間となる可能性が高いです。

 

拘束時間の上限や下限はあるのか

労働基準法では、労働時間の上限に関する規定はあるものの、拘束時間の上限や下限は定められていません。しかし、中には例外が認められるケースがあります。
 

◆例外が認められるケース

トラックやバス、タクシー運転手などの自動車運転者の場合、厚生労働省で「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」が定められています。長時間の拘束による自動車運転者の心身への影響を考慮して設けられたもので、労働条件の向上を図ることが目的です。
 
この改善基準告示では、次のことが定められました。

  • 1日または1カ月ごとの拘束時間の上限
  • インターバル時間(休憩時間)の下限

なお、「拘束時間」と「休息時間」の基準も次のように定めています。
 

・拘束時間

始業時間から終業時間までの間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間も含まれる)の合計時間
 

・休息時間

勤務と次の勤務の間の時間を指す。労働者の生活時間であり、自由に使える時間
 
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変形労働時間制やみなし労働などとの関係は?

柔軟な働き方を選択できる方法として、下記の制度を導入する企業があります。
 

・変形労働時間制

月単位や年単位などで労働時間を設定し、業務量に合わせて1日の労働時間を自由に決められる制度
 

・みなし労働制

実際に働いた時間でなく、事前に決められた時間を労働時間とみなす制度
 
上記は労働基準法が定める「1日8時間、週40時間」の労働時間の例外として許容された制度であり、拘束時間そのものと直接関連するものではありません。

 

拘束時間に関する注意点

拘束時間において従業員とのトラブルになり得るのは、実作業に従事していない移動時間や朝礼などの時間が労働基準法上の労働時間に当たるかどうかという点です。
 
たとえば、1995年に判決が下った「三菱重工業長崎造船所事件」では、従業員が作業所内で行う業務の準備行為などが労働基準法上の労働時間に当たるかどうかが争われました。判決では従業員の訴えが認められ、企業は割増賃金の支払いを命じられました。
 
このような紛争を避けるためにも、「従業員が企業の指揮命令下に置かれているかどうか」を判断軸に、自社のどの時間が拘束時間にあたるのかを理解することが重要です。

 
<取材先>
弁護士法人イノベンティア 弁護士 平野潤さん
京都大学法学部卒業。総合事務所の勤務や個人事務所の代表を経て、2018年12月に弁護士法人イノベンティアに所属、2022年1月より同事務所のパートナー弁護士に就任。知的財産法やコーポレート、労働法を専門に扱う。
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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