会社で制服を着るようになったのはなぜ? 着用のメリットや導入の注意点

制服を着て働く会社員のイメージ


銀行員、客室乗務員、内勤の事務員など、企業や職種によって様々な制服があります。制服を着る文化が生まれた経緯から、制服着用によって生まれる効果や近年の制服のトレンド、さらには制服を導入する際の注意点について、日本ユニフォームセンター業務部の谷山洪栄さんと技術研究グループの清水さんにお話を聞きました。

 
 

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明治時代に誕生した制服文化


――日本で制服文化が生まれたのはいつ頃ですか? その後、発展した経緯について教えてください。
 
清水:制服文化は、明治維新以降に生まれました。郵便、鉄道、警察、税務署などの各機関が整備され、そこで働く人たちの制服が作られたことが始まりです。大正時代になると、バスガール(女性車掌)や百貨店の店員など職業婦人が増えたことに伴って、女性の制服も普及しました。そして、第二次世界大戦後の1949年に国鉄、1950年に陸上自衛隊の前身である「警察予備隊」など官営の組織を中心に様々な制服が誕生しました。
 
1960年代には民間企業でも制服の需要が拡大し、1970年の大阪万博で各企業のコンパニオンスタッフがデザイン性の高いユニフォームを着用したことを契機に、民間企業からコーポレートアイデンティティの確立を目的とした制服が登場しました。2000年代に入ると、クールビズを意識した制服、猛暑に対応した作業服など、時代の流れに対応した変化を遂げながら制服文化は発展しました。
 
――長い歴史を経て発展してきたのですね。制服にはどのような種類がありますか?
 
清水:職業服としては警察官や救急隊員、裁判官などの官公庁関係の制服から、航空、銀行、医療、ホテル、一般事務など民間企業関係のものまで多種多様です。制服を種類別に大別すると、(1)ワーキングユニフォーム (2)オフィスユニフォーム (3)サービスユニフォームの3つに分類することができます。
 
(1)ワーキングユニフォーム
建築、工業、電機、ガス、水道や製造業などに従事する労働者が着用する制服で、作業のしやすさや安全性を高めることが求められます。作業服や防塵服、遠くからでも目に付く色や反射素材を使った高視認性安全服など、軽作業から重作業、特殊作業用まで幅広い種類があります。
 
(2)オフィスユニフォーム
主に事務作業を行う人が着用するもので、銀行や内勤の事務員の制服が該当します。男性は自前のスーツを着るのが一般的なことからオフィスユニフォームは女性用が多く、ジャケット、ベスト、ボトムスの3点セットが定番ですが、近年はクールビズ、ウォームビズ用のオーバーブラウスやカーディガンを用意する企業もあります。
 
(3)サービスユニフォーム
主に接客に従事する人が着用し、顧客からの印象も十分に考えられた制服です。飲食店やホテルなどで接客をする人たちに加え、介護用ウエア、医師や看護師が着用するメディカルウエアまで多岐にわたるのが特徴です。

 
 
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制服は企業戦略のツールになる


――制服を着用することでどのような効果がありますか?
 
清水:制服には、対内的・対外的な効用があります。まず、対内的な効用としては、事故災害防止、作業能率向上、組織内での識別性、従業員の経済負担を減らせるといった点が挙げられます。また、倫理意識の向上、職業・職制への誇りを生む、帰属意識の醸成、公私の切り替えがしやすいなど心理的効果も期待できます。
 
一方、対外的な効用は、企業イメージの統一や転換、企業と個人の信用度向上、他企業や顧客との識別性、識別性によって生まれるセキュリティ効果などがあります。これらのことから制服は、その機能性だけでなく企業戦略ツールにもなりうるということが言えるでしょう。
 
――様々な効果があるため導入を検討する企業もあると思いますが、制服を導入するときにはどんな注意が必要ですか?
 
清水:まず注意してほしいのが、豊富なサイズを用意しなければならない点です。従業員全員が対象のため、すべての人が着用できるサイズ対応が求められます。一般の衣服よりも幅広いサイズ対応が求められ、袖やズボンの長さなど細かな調整も必要です。
 
2つ目は耐久性です。1日8時間、連続着用した上で、数年は使用する制服は、一般の衣類よりも高い耐久性が必要です。さらに、仕事によっては特殊な環境に耐えられる素材でなくてはなりません。
 
また、退職時に制服が会社に返却されない、不要になった制服の転売などのトラブルが起こらないよう制服に関する社内ルールを設けておくのもよいでしょう。企業が制服を廃棄する際には、一般的には産業廃棄物に該当するため、法令に則った処分を行うことも注意が必要です。

 
 
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制服にSDGsの観点を取り入れる企業も


――近年の制服のトレンドについて教えてください。
 
谷山:近年は、より機能性の高い制服が生まれています。たとえば、夏にかけて暑熱対策として小型の電動ファンが内蔵されているユニフォームや冷水が作業服の中を巡って体を冷やすといった暑さ対策を施したものなどが多く採用されています。
 
また、SDGsの観点を制服に取り入れる企業や団体も増えています。植物由来原料やペットボトルの廃材で作ったポリエステル素材の制服の導入、不要になった制服を新たな製品に再利用するなどの取り組みがあります。
 
自社の受注内では、LGBTQの視点を取り入れた制服も増加傾向です。以前は、男女で制服の色を変えたり、女性の制服に体のラインを強調したりするデザインもありましたが、近年は、性別に関係なく同じ機能性、デザイン性の制服を導入する企業、団体が増えています。
 
――制服の導入を検討している企業の皆さんへメッセージをお願いします。
 
谷山:制服は、業務に応じて動きやすさ、働きやすさを追究した衣服なので、生産性を高めることにつながります。さらには、企業のイメージアップやリクルート効果を高めるなど企業の戦略ツールにもなります。それだけに制服を検討する際には、着せる側の目的、着る側の目的、着る側の満足度、見る側に伝えるイメージがあることを意識し、ユニフォームの3要素(審美性、機能性、象徴性)をバランスよく取り入れた企画デザインが重要です。
 
清水:制服は同じ仕様で一度に作るため、省資源化につながるという点で、制服自体がサステナブルだという認識も広がっています。制服導入を検討する際に、そうした考え方も取り入れてもらえたらうれしいです。

 
 
 

<取材先>
公益財団法人日本ユニフォームセンター
業務部 谷山洪栄さん、技術研究グループ 清水さん
 
世界で唯一のユニフォーム研究・開発団体。1962年設立以来、多くのユニフォームの調査・研究・開発に係り、現代の高機能ユニフォーム製作の礎を築いた。官公庁・公企業から私企業まで幅広く2,000件以上のユニフォームデザイン・コンサルティングの実績を上げる。また、ユニフォームの無料相談も受け付けている。
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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