業務棚卸しのメリットと効果的な進め方とは

業務棚卸しの抽象的なイメージ


企業の業務改善など様々な目的で行われる「業務棚卸し」。実施するメリットや効果的な進め方について、幅広い企業の業務改善や生産性向上に携わるTOMAコンサルタンツグループの持木健太さんに解説していただきました。

 
 

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業務棚卸しとは


「業務棚卸し」とは、部署や個人など、企業内で行っているすべての業務を洗い出し、可視化することを指します。

 
 

◆業務棚卸しをする目的


企業が業務棚卸しをする目的は、下記の通りです。

  • 生産性向上
  • 残業時間削減
  • 人材育成
  • 人事評価 など


生産性向上を主な目的としながら、複合的な効果を期待して行う傾向にあります。

 
 

◆業務棚卸しが必要な理由


下記の例をもとに解説します。
 
例)次の二人のうち、どちらが生産性の高い仕事をしているでしょうか。

  • Aさん…毎日定時で帰宅している
  • Bさん…毎日1時間残業をしている


答えは「わからない」です。業務内容や難易度、量などはそれぞれ異なるため、労働時間しか提示されていない上記の情報だけでは生産性の高さを判断できないからです。
 
この例からわかるように、目的の一つである生産性向上に取り組むには、従業員一人ひとりの仕事量や内容を整理する業務棚卸しが必要になるのです。

 
 
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業務棚卸しのメリット


企業が業務棚卸しをするメリットは以下の通りです。

 
 

◆業務の効率化につながる


担当者が「非効率」と感じている業務と実際に非効率な業務は異なることがあります。たとえば、優先度の高くない業務にも関わらず、担当者が好きな業務である場合、時間がかかっても非効率と思わず淡々と進めることがあります。その逆で、優先度が高い業務であっても、担当者が苦手な業務や面倒だと感じる業務は作業に携わる時間が短くても非効率だと感じることがあります。
 
業務改善を進める際は、担当者の主観ではなく業務にかかった時間を可視化することなどで、客観的に「単純作業かつ時間がかかっている業務」や重複作業をピックアップします。

 
 

◆作業配分が適正かどうかを見極められる


従業員一人ひとりの業務量や時間を把握でき、適正化を図れます。

 
 

◆人事評価がしやすくなる


可視化しづらく評価が難しい業務や一人ひとりの仕事量や時間を把握でき、人事評価をしやすくなります。

 
 

◆業務の属人化をなくせる


業務を可視化することで、担当者の入院や急な退職などの緊急時にも複数の従業員で作業を分担できます。

 
 

職種ごとに得られる効果とその度合い


業務棚卸しで得られる効果やその度合いは職種によって異なります。それぞれ解説します。

 
 

◆バックオフィス(経理、労務、人事、総務、営業事務など)


バックオフィス関連は、「定型業務が多い」「業務が属人化しやすく、誰がどのような業務に携わり、どのくらいの時間をかけてやっているのかを企業が把握できていないケースがある」「実績を数値化しづらく人事評価がしづらい」などの特徴があります。
 
業務棚卸しをすることで個人の業務量やかかる時間を可視化でき、業務効率化や人事評価をしやすくなります。

 
 

◆工場の作業


目に見える物を製造しており、マニュアルもあることから、業務や分担を可視化できていることが一般的です。すでに効率化されていることもあり、業務棚卸しによる劇的な効果は得づらいといえます。しかし、業務の全体像を把握でき、ボトルネック工程の解消や作業手順の見直しなどに役立ちます。

 
 

◆営業


従業員が現在アプローチしている企業や担当している顧客、進捗状況などを可視化しチーム内で共有することで、改善や効率化につながりやすくなります。
 
一方、人事評価のしやすさに関しては、あまり効果を期待できません。売上実績に加え、顧客訪問回数や提出した見積の金額などで仕事に向き合う姿勢や「未来の売上につなげられる行為がどれだけできているか」を企業が把握しやすく、すでに評価基準がはっきりしているからです。

 
 

◆企画職、管理職など


その時々の課題によって提案すべき解決策が異なる企画職やマネジメントなどイレギュラーな業務の発生する管理職は、業務を定型化しづらい特徴があります。従業員が現在担当している案件や進捗状況などをある程度可視化することはできますが、すべてを洗い出すことは難しく、業務棚卸しによる効果は得づらいといえます。

 
 
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業務棚卸しの進め方


1.目標を設定する
目標を設定し「業務を可視化して効率化を図り、残業時間を削減しましょう」「業務の配分を適正化し、不公平をなくしましょう」などのメッセージをトップが発信して社内で共有します。業務棚卸しには従業員の協力が欠かせないため、目標を達成できたら評価としてプラスになるなど人事評価と連動させながら進め、従業員のモチベーションを高めることがポイントです。
 
2.業務を書き出す
メモ書き程度でいいので、従業員一人ひとりが「業務内容」と「それぞれの業務にかかった時間」を1カ月分記録します。日報がある場合、「何の業務にどのくらいの時間を費やしたか」が書かれていれば、メモは必要ありません。
 
従業員によって記載内容に濃淡が生じる可能性があります。あらかじめ企業側で「業務内容」「1回の作業時間」などを記載できるフォーマットを用意しておくのも有効です。
 
3.業務棚卸表への記入
2で書いた内容を次の3層に分け、業務棚卸表に記載します。

  • 大分類…企業内で共通する項目
  • 中分類…部門、部署間の共通項目
  • 小分類…個人ベースの項目


・分類方法

  1. 個人ベースの項目(小分類)を洗い出してもらいます。
  2. 1を部門や部署ごとに集約し、作業別にまとめてグループ化します(中分類)。従業員ごとに項目名がバラバラな場合は、統一します。
  3. 2を集約し、企業内で共通する項目(大分類)を決めます。


例)経理の業務の一部

  • 小分類 請求書発行、売掛金、現金売上、銀行振込
  • 中分類 伝票作成
  • 大分類 経理業務


4.業務量調査の実施
業務棚卸表をもとに、どの業務にどれだけの時間がかかるかを分単位で記入し、1回の業務にかかる時間や発生頻度、年間業務量を算出します。
 
このとき担当者別に試算することで、1カ月あたりの実際の業務時間と比較でき、大幅な乖離を防ぐことができます。

 
 

◆注意点


業務棚卸しがうまくいかない企業が陥りやすいパターンに、漠然と企業内で行っている業務の棚卸しをするケースがあります。個人ベースの業務内容を把握しないまま棚卸しをしようとしてもコントロールが難しく、収拾がつかなくなる可能性があります。「業務棚卸しの進め方」の3で紹介した順に進めるといいでしょう。

 
 

◆問題を抱える業務の洗い出し方と業務改善に向けた検討


改善すべき業務を洗い出す際のポイントは、「単純作業かつ時間がかかっている業務」をピックアップすることです。業務量調査の内容を参考に進めましょう。
 
下記に挙げた作業も様々な方法で業務改善できます。
 
・重複作業
従業員が手書きした人事書類の内容を人事担当者がシステムに入力するなどの作業があります。人事書類をデジタル化して従業員に直接入力してもらうことで、業務効率化を図れます。
 
・資料の探索時間
資料をデジタル化することで、探索時間を削減できます。
 
・待機時間
PCを持ち歩くことで、カフェやコワーキングスペースなどオフィス以外の場所でも仕事をしやすくなります。
 
これらの方法で削減できた時間をほかの仕事に充てることができます。経理の場合、過去の分析をもとに投資先を決めるなど、経営に近い仕事に費やせます。人事であれば、制度の構築や法改正の対応などができるようになります。
 
業務棚卸しを闇雲に進めても、うまくいかない可能性があります。まずは、担当者が知識やノウハウを学ぶことが肝心です。書籍を読む、外部のセミナーを活用するなどして、効果的に進めましょう。

 
 
 

<取材先>
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 中小企業診断士 持木健太さん
立教大学理学部物理学科卒業。学習塾の勤務を経てTOMAコンサルタンツグループ株式会社に入社。DX推進の責任者としてテレワークの環境構築・ペーパーレス化・電子帳簿保存法対応・ビジネスモデルの再構築などの分野で活躍。企業の生産性向上や付加価値向上を目指し、中小企業から上場企業まで幅広く対応する。
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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