人事異動において、人事担当者が行うべき手続きと注意点とは


人材育成や生産性の向上など、組織の活性化を図るために実施される人事異動。異動先が本人の希望と異なる場合や、異動先の人間関係に不安が生じるなど、様々な課題もつきものです。こうしたトラブルを回避し、円滑な人事異動を進めるため、人事担当者が押さえておくべきポイントとは。社会保険労務士法人出口事務所代表の出口裕美さんに伺いました。

 
 

求人を掲載

一般的な人事異動の種類とは


――人事異動にはどのような種類がありますか?
 
企業によって、人事異動の時期や頻度など様々ですが、一般的な異動の種類は以下のものがあります。

 

  • 配置転換・・・同じ事業所内、企業内で部署などが変わること
  • 転勤・・・同じ企業内で転居が伴う異動のこと
  • 職種変更・・・営業職から事務職など職種が変わること


「昇進」や「降格」も人事異動と捉える場合もあります。今回は企業内に限定していますが、同じ企業に在籍したまま、親会社や子会社などの関連企業に勤務する「出向」や、在籍していた企業との雇用契約を解除し、転籍先の企業と雇用契約を結ぶ「転籍」などもあります。企業にもよりますが、大きな人事異動が行われる時期は通常、年に1、2回というところが多いようです。
 
――人事異動を実施する際、どのような手順とスケジュールで進めますか。
 
人事異動を実施する際、一般的には①人事異動を実施する目的を明確にする ②候補者を挙げる ③内示を出す ④辞令を出す――といったスケジュールで進みます。年に1回程度、各従業員に異動希望を調査し、その内容を踏まえた上で人事異動の計画を検討する企業が多いようです。
本人に異動を伝える内示は、一般的には1カ月~1週間前が多いです。特に転勤の場合は、引っ越しを伴うケースが多いため、1カ月前までに内示があるところが多いのではないでしょうか。
 
――異動に伴って人事担当者が行うべき手続きはありますか?
 
転勤の場合の社会保険と雇用保険の手続きです。社会保険、雇用保険ともに、支店や営業所など事業所を一つの単位として適用されている場合は、転勤によって勤務する事業所が変わることになれば、一度被保険者の資格を喪失して、新たな事業所で被保険者の資格を取得します。なお、本社で一括加入している場合は、転勤の度に提出する必要はありません。

 
 
Indeed (インディード) | はじめての求人投稿、初期設定を電話でサポート! | 詳しくはこちらIndeed (インディード) | はじめての求人投稿、初期設定を電話でサポート! | 詳しくはこちら
 
 

人事異動のトラブルが裁判に発展するケースも


――異動を言い渡された従業員は拒否できないのでしょうか?
 
日本の企業は、基本的に正社員として採用されれば、特別なことがない限り定年まで退職させない終身雇用制度の上に成り立っています。その代わり、企業側には人事権という強い権限があるので、異動命令については合理的な理由がない限り従わなければなりません。「希望の部署ではないので行きたくない」「異動先の上司が苦手なので異動したくない」などの理由で拒否することはできず、正当な理由がないまま拒否してしまうと、懲戒処分の対象になり、会社を辞める事態にもなりかねません。
 
一方で、男性が仕事、女性が家庭に入るという以前の社会のあり方とは大きく変わり、共働きの従業員が増えていることから、介護や育児などが理由で転勤に応じられないというケースも増えているようですので、人事異動を検討するときには、そうした背景も考慮する必要があります。状況によっては離職や裁判にまで発展するケースもあるので注意しましょう。
 
――こうしたトラブルを防ぐために、どのような工夫ができますか?
 
事前に個人的な状況を把握しておくことも大切ですし、異動を伝えるときに従業員に丁寧な説明を行い、異動後に問題がないか話を聞くなどのフォローも有効です。もし異動に伴って人間関係で問題が生じた場合は、本人と上司や該当部署の従業員の話をそれぞれ聞きましょう。その上でどうしても難しい状況であれば、他部署への異動を検討することも必要です。

 
 
Indeed (インディード) | 世界No.1の求人サイト Indeedで求人掲載してみませんか | 掲載をはじめるIndeed (インディード) | 世界No.1の求人サイト Indeedで求人掲載してみませんか | 掲載をはじめる
 
 

課題解決にもつながる「多様な正社員」という働き方


――人事異動に関する課題について、各企業は何らかの取り組みを進めているのでしょうか?
 
人事異動で生じる課題の解決策の一つとして、正社員のあり方を変える動きがあります。従来の正社員は、勤務地や勤務時間、職種などに制限がありませんでした。しかし、非正規雇用労働者と正社員の二極化や、労働者のワーク・ライフ・バランスを求める風潮などから、労使双方にとって望ましい多様な働き方が求められるようになっています。このような時流を受け、「多様な正社員」と呼ばれる働き方が登場しています。これは、従業員の状況に応じて労働内容に制限を設ける、新しい正社員のあり方です。従業員にあらかじめ働ける条件を確認しているので、人事異動のトラブルを未然に防ぐことにつながるわけです。
 
ただし、通常の正社員と条件面が大きく異なるため、給与面での調整が必要です。また、勤務地を限定した場合、その事業所が閉鎖してしまったときには働けなくなることもありますし、希望する条件に合わせられなかった場合に従業員が辞める判断を下してしまう可能性もあります。勤務地、時間、職種を限定することで従業員にデメリットが生じることも知っておいてください。
 
――今後、多様な正社員の在り方の需要は高まっていきそうですね。
 
多様な正社員という働き方は、採用時に導入するだけでなく、結婚、出産、親の介護など、ライフステージが変わった時点で会社と相談し、条件付きの働き方を選択する方法も可能です。一人の従業員が、自分のライフスタイル、ステージに合わせて選択できる状態になれば、従業員にとっても、企業にとっても理想的ではないでしょうか。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年9月時点のものです。
 
<取材先>
社会保険労務士事務所 代表 出口裕美さん
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan +笹田理恵+ ノオト

求人を掲載
準備はできましたか?求人を掲載

*ここに掲載されている内容は、情報提供のみを目的としています。Indeed は就職斡旋業者でも法的アドバイスを提供する企業でもありません。Indeed は、求人内容に関する一切の責任を負わず、また、ここに掲載されている情報は求人広告のパフォーマンスを保証するものでもありません。