「パタニティハラスメント」とは 男性社員の育休取得の実態と課題

妊娠している妻とその夫のイメージ


育児休業の取得を希望する男性が年々増加しています。2022年4月から施行された改正育児・介護休業法でも、男性も育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が求められています。一方では「なぜ男性が?」「男性なのにそんなに長く休むの?」と男性が育児のために仕事を休むことを歓迎しない風潮も根強く残り、「パタハラ」と呼ばれるハラスメントが問題になっています。男性社員の育休取得の実態と現状の課題について、社会保険労務士法人出口事務所代表の出口裕美さんにお聞きしました。

 
 

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男性の育休取得に対するハラスメント


――「パタハラ」とは何でしょうか。どんな行為が「パタハラ」と呼ばれているのでしょうか。
 
「職場における妊娠・出産・育児休業等を理由とするハラスメント」のうち、男性従業員に対するハラスメントが「パタハラ」と呼ばれているようです。「父性」を表す「パタニティ(paternity)」とハラスメントを合わせた言葉ですね。
 
「マタハラ」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。こちらは「母性」という意味の「マタニティ(maternity)」とハラスメントを組み合わせた言葉です。昔は妊娠や出産を機に仕事を辞める女性がほとんどでした。時代が移り、育児をしながら仕事も続けたいという女性が増えてきた際に、育児休業を取得させづらくしたり、育児休業を取った女性を冷遇するといった問題が「マタハラ」と呼ばれるようになりました。
 
さらに近年では、男性も育児休業を取得することが増えてきました。育児休業をめぐる男性に対してのハラスメントも、残念ながら生じているのだと思います。
 
――育児休業を取得する男性はどれくらいいるのでしょうか?
 
厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によれば、育児休業取得者の割合は女性 81.6%、男性 12.65%となっています。女性と比べるとずいぶん少ない割合のように感じられますが、令和元年の調査では男性の育休取得率は7.48%、10年ほど前までは1%台でした。ここ数年で急速に育児休業を取得する男性が増えている現状があります。
 
ただ、この調査では育休の取得日数までは分かりませんが、女性は育児休業を1年ほど取得する人が多いのに対し、男性は数日~数週間程度の人が多いように感じます。しかし今後は少しずつより長期間の育児休業を取得する男性も増えると思われます。

 
 

国も男性の育休取得促進を呼びかけ


――まだ男性の育休取得に寛容な職場は少ないように感じます。たとえば「奥さんが家にいるのに、なぜ男性も休まなければいけないの?」と聞かれたりしそうです。
 
聞く側に悪気はなくても、上司や同僚からそう言われると育休を取りづらくなってしまいますよね。「奥さんは何をしているの?」「専業主婦じゃなかった?」と何気なく聞いてしまいがちな質問も、育休取得をためらわせるパタハラとなりかねません。出産するのは女性ですが、育児は男性も女性もできるからです。「子育ては女性だけがするもの」という価値観は昔のものになりつつあります。
 
そして、子育てを取り巻く家庭環境も昔とは大きく変わっています。出産後も仕事を続ける女性は増えている一方で、両親と同居する世帯は減っています。生まれたばかりの子どもだけではなく、きょうだい児がいる家庭や、親の介護もしなければならない家庭もあるでしょう。育児において男性に期待される役割はますます大きくなっています。経営者には先入観にとらわれず、多様な家族のあり方に配慮して、従業員が仕事と子育てを両立できるよう支えていくことが求められています。
 
――男性の従業員も気兼ねなく育児休業を取れるよう、企業として応援していくことが必要なのですね。
 
その通りです。国も男女ともに仕事と育児の両立を可能にするための施策に力を入れています。たとえば、育児休業を取得した労働者に対して、雇用保険から支払われる「育児休業給付金」は、以前は妻か夫のいずれか一人しか受給できませんでした。現在では二人ともが育児休業を取得すれば、双方に支払われるようになっています。
 
また、2022年4月から施行された「改正育児・介護休業法」も、男性の育児休業の取得を促進するよう、強く企業に求める内容となっています。

 
 

すべての従業員に育休制度の周知を


――改正された「育児・介護休業法」のポイントについて教えてください。
 
企業には「育児休業を取得しやすい雇用環境の整備」が義務づけられました。社員向けに育休制度に関する研修を行う、相談窓口を設置する、自社で育休を取得した人の事例を紹介する、育休取得促進についての方針をポスター等で周知するなど、事業主には啓発のために具体的な措置を講じることとされています。
 
そして、従業員から妊娠や出産の申し出があった場合は、企業から本人に育休制度について説明し、育休取得の意向があるかどうかを確認すべきとなっています。この時、取得を控えさせるような形での周知や意向確認とならないよう注意しましょう。
 
また、2022年10月からは「産後パパ育休(出生時育児休業)」という制度がスタートします。これは、子の出生後8週間以内に4週間まで育休を取得でき、かつ4週を2回まで分割して取得できるというものです。産後パパ育休とは別に、現行と同じく原則として子が1歳になるまで(最長で2歳まで)に取得できる育児休業も、分割して2回取得することが可能となります。
 
また、有期雇用者についても育児休業を取得する条件が緩和されました。有期雇用で育休を取得できるのは、以前は「雇用された期間が1年以上の従業員」に限られていましたが、この1年以上という要件はなくなりました。
 
――従業員に制度を周知したり、場合によっては就業規則を見直したりと、企業は様々な準備が必要になりますね。
 
そうですね。たとえば2週間ずつ何度か育児休業を取得する、という従業員が増えれば、それぞれの職場での仕事の進め方も変わってくるでしょう。育児休業を取得する可能性がある従業員はもちろん、管理職などすべての従業員に対して育児休業について理解してもらえるよう、研修などを行うことが大切です。
 
また、若い世代ほど男女ともに育児休業を取って仕事と子育てを両立したいと考える人が増えていると感じます。育児休業取得率の低い企業は求職者にも選ばれにくくなる可能性があります。育児休業を取得する男性はまだ少数かもしれませんが、今のうちから誰でも育児休業を取りやすくなるように備えておくことが、どの企業にとっても重要です。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年5月時点のものです。
 
<取材先>
社会保険労務士法人出口事務所 代表 出口裕美さん
企業のパートナーとして、人事労務のあらゆる業務をサポートしている。全国社会保険労務士会連合会の代議員や東京都社会保険労務士会の常任理事も務める。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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