
Indeed のHead of Responsible AIが、急速に進化する現代のテクノロジーについて人材採用のリーダーがおさえておくべき本質を明らかにするとともに、その具体的な活用法をご紹介します。
キーポイント
- 生成AIから一歩進んだエージェンティックAIでは、応募書類の審査や候補者のランク付け、応募者への連絡などのタスクを自律的に実行することができます。
- AIエージェントは、トランスファラブルスキルのマッピング、候補者へのスキル評価テストの提案、一人ひとりに合わせた学習と能力開発のカスタマイズを通じて、採用企業がスキルギャップ(企業が求めるスキルと、従業員のスキルにミスマッチがある状態)を埋めるサポートをすることができます。
- 採用企業は、採用活動と従業員体験の改善に向けて、社内にあるAIシステムを活用しながら試行錯誤することが大切です。
AIの急速な進化に圧倒されている人材採用のリーダーの皆さんに朗報です。「この記事を読んでいる時点で、心配はいりません」と、Indeed のHead of Responsible AIであるTrey Causeyは話します。「AIを活用することを少しでも検討しているのなら、すでに時代を先取りしています」。
このインタビューでは、CauseyがAIブームの本質を見抜き、採用における最新のAI技術である生成AI(GenAI)、エージェンティックAI、そして現実に迫り来る人工汎用知能(AGI)(超知能)について、人材採用のリーダーがおさえておくべきポイントを分かりやすく解説しています。なお、本インタビューは、簡潔さと明確さを重視して一部編集しています。
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求人を作成するChatGPTをはじめ、生成AIが少しずつ定着してきました。エージェンティックAIにはどのような違いがありますか?また、採用活動や従業員の定着にはどのように活用できますか?
Causey:生成AIの特徴は、その名のとおり、プロンプトやユーザーが入力した指示に基づいて、新しい文章やコンテンツを生成することです。たとえば、求人内容の作成やカスタマーサービスの問い合わせ対応など、アイデアが求められる場面で活用されています。
エージェンティックAIは、その次のステップにあたります。現在の生成AIの多くはチャット形式で動作し、そのすべてがチャット内で完結します。一方で、AI「エージェント」は、私たちの代わりに行動してくれるアシスタントのような存在です。この自律的に動作するという点が、エージェンティックAIの最大の特徴です。
たとえば、募集中の職種に対する応募を毎日確認するように、AIエージェントを設定できます。このエージェントを使用して、応募内容を要約したり、求めているスキルや経験を持つ候補者を特定できるほか、その候補者をまとめたレポートを作成し、一日の終わりに確認できます。さらに、承認した候補者に対して、一人ひとりに合わせたメッセージを作成して送信し、選考用のコールに招待し、候補者が応答した際に通知を受け取るように設定することもできます。
従来のAIは、他のシステムと連携することができませんでした。そのため、AIが履歴書の情報を取得するには、そのような情報にアクセスできるように、AIにあらかじめ読み込ませておく必要がありました。しかし、エージェンティックAIでは、この一連の流れにステップを次々に追加できるだけでなく、他の作業をしている間もバックグラウンドで動作します。Indeed では、こうしたプロセス全体の効率化を図る取り組みを進めています。
[FutureWorks 2024で、Indeed のCEOであるChris Hyamsは、間もなくリリース予定のAIを活用したサービス(日本でのローンチは未定)を発表しました。キャリア開発に役立つリソースを求職者に提供し、採用企業が人材のギャップを解消できるようサポートするサービスです。]
エージェンティックAI特有の誤解や問題について、ユーザーが意識しておくべきことはありますか?
Causey:AIシステムには、問題やミスが起こりやすい傾向があります。たとえそれが生成AIの進化形であっても、完璧であるとは限りません。
このようなAIエージェントは自律的にアクションを行うように設計されていますが、判断ミスや誤作動が起きた場合には、それだけ代償が大きくなるという側面もあります。たとえば、候補者に連絡をしたら、それを取り消すことはできません。AIエージェントにどのようなタスクを任せるかを明確な意図を持って決定し、タスクや出力内容を確認できる手段を用意しておくことが重要です。現時点ですべての仕事をAIエージェントに任せるのは、時期尚早と言えるでしょう。
自動運転車の初期段階のようなものです。まだハンドルから手を離すべきではありません。
Indeed の最新のグローバルレポートによると、採用企業と求職者のどちらも、スキルファースト(職歴や学歴よりもスキルや能力を重視する)採用を支持していますが、時間とリソースの制約が障壁となっています。では、エージェンティックAIはどのように役立つのでしょうか?
Causey:スキルファースト採用に移行する中で最大の課題は3つあります。求職者が必要なスキルを持っているかどうかを判断するにはどうすればよいか、そもそも、求職者自身が自分がそのスキルを持っていることを認識しているのか、そして、求職者と採用企業の双方が信頼できる方法でその両方を検証するにはどうすればよいかということです。
AIエージェントが履歴書を自動的に確認し、記載されているスキルを抽出するだけでなく、職歴情報を活用して、候補者が以前就いていた職種に関連する他のスキルをマッピングする場面を想像してみてください。さらに、求職者にフォローアップの連絡をし、次のように伝えることもできます。「履歴書には記載されていませんが、A、B、Cの職歴から判断すると、このようなスキルをお持ちかもしれません。評価テストを受けてみませんか?」
こうしたやり取りを自動化することで、履歴書に「適切な」言葉が使われていないという理由だけで候補者が除外されるのを防ぐことができます。また、リクルーターが応募者のスキルについてフォローアップの連絡をし、返信を待つ時間的な余裕がある場合にしか応募内容を審査できないという状況も避けられます。評価テストによってスキルに対する信頼性が高まるため、採用企業は応募者の本質的なスキルをすばやく確認して、面接に進むことができます。
Indeed のグローバル調査では、従業員が採用企業を選ぶ際に、給与よりも学習と能力開発(L&D)の機会を重視する傾向が強まっていることも示されています。採用企業は人材を惹きつけ、定着させるために、L&Dの分野でどのようにAIを活用できるでしょうか?
Causey:AIを活用することで、従業員にL&Dをオンデマンドで提供するためのさまざまな可能性を大規模に、比較的低コストで広げることができます。一人ひとりに合わせた学習プランや教材の作成に加え、学習の進捗状況を確認するためのテストの実施や、各自のペースで学習を進める機会の提供も可能になります。
しかし、そこには人との関わりという要素が残ります。オンライン学習では、責任を持って最後まで続けるのが難しいこともあります。たとえば、夜の9時に子どもを寝かしつけたあとに、Pythonの勉強をする気は起きないかもしれません。そこで、マネージャーが支援し、やる気を引き出します。成功への鍵は、常に人間的な要素にあります。
AIは職場のウェルビーイングにも役立つのでしょうか?役立つとしたら、どのように活用できるでしょうか?
Causey:監視文化を生み出すことは望ましくありませんが、マネージャーが過剰な負担を抱えていて、チームメンバーの1人が意欲を失いつつあることに気づけないような場合には、AIが有用だと考えています。
たとえば、欠勤に関するデータを収集しているとします。AIエージェントを使用すれば、定期的にレポートを作成し、休息が必要と考えられる従業員を特定することができます。データを集約して、簡単にアクセスし、活用できるようにする方法は数多くあります。
一般的なAIの進化形とされる汎用人工知能(AGI)は、これまで議論されてきた他のAIとはどのように異なるのでしょうか?
Causey:汎用人工知能とは基本的に、あらゆるタスクにおいて人間を凌駕する能力を持つシステム、またはシステム群のことです。しかし、それがどのようなものかという明確な定義は確立されていないため、「人間がまだ手にしていないもの」と冗談交じりに表現する人もいます。現時点では、どちらかというと学術的な議論の域を出ていません。
大手のAI研究所の多くは、AGIの実現時期の見通しを早めつつあり、実際にこれらのシステム開発に携わっているエンジニアも同様の見方を示しています。AGIに関する悲観的なシナリオもいくつか提案されていますが、私にはあまり説得力があるとは思えません。何かに優れている、または優れているように見えるからといって、人間がすることすべてができるわけではありません。
では、現時点で採用企業がAGIについて把握しておくべきことは何でしょうか?
Causey:私の率直な考えは、気にし過ぎる必要はないということです。AGIのマクロ経済への影響については、現時点ではさまざまなシナリオが同じ程度に起こり得るため、今後さらに情報が得られるまでは具体的な対策は取りにくい状況です。AGIが実現するかどうか、あるいはいつ実現するかという問題は、私たちが今あるシステムをどう活用するかということに比べれば、それほど重要ではないでしょう。
どのAIを使うべきか、どこに使うべきかといったことに時間をかけるよりも、まずは(言うまでもなく、会社の方針と与えられた条件の範囲内で)あらゆる業務にAIを使ってみることが大切です。試行錯誤を重ねることで、失敗による影響を抑え、完璧を求めるプレッシャーを和らげることができます。他のツールと同様、AIも使ってみなければ上達しません。
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