アルバイトの給与設定に個人差があってもいい?
アルバイトの給与は、比較的低い時給からスタートし、能力に伴ってアップしていく形が一般的です。その過程で、給与設定に個人差が発生しても問題ありません。
ただし、個人差が発生する場合は明確な理由が必要です。店舗でいえば、「接客のレベルが高い」「バイトリーダーとして、新人に教えられる」など、任せている業務内容や売上への貢献度に応じて給与を設定してください。管理者の好き嫌いによって個人差をつけるのはNGです。
一般的に、アルバイトに任せる仕事は、限定的かつ補助的な業務が多いでしょう。もし高い時給を設定し、大きな業務や責任を負わせるのであれば、アルバイトではなく正社員として雇用することを検討する必要があるかもしれません。
アルバイトの給与で個人差をつける方法
アルバイトの給与において個人差をつける方法としては、時給や特別手当、ボーナスが挙げられます。
◆時給
厚生労働省は、2020年から「同一労働同一賃金」を導入し始めました。これは、「同じ仕事をしているのであれば、アルバイトも正社員も時給換算で同じ賃金を支給しましょう」という考え方です。したがって、アルバイトの時給をアップする前に、現状どのような業務内容を任せているのか正確に把握しておくことが必要です。
時給に差をつける場合は、あらかじめ業務一覧表を作成しておくとよいでしょう。飲食店であれば「配膳ができる」「券売機のお金をチェックできる」「新人に指導できる」等の項目が考えられます。「Aさんはなんとなく頑張っているから」といった感覚ではなく、業務内容やスキルに応じて時給を設定しなければなりません。
「Aバイトは時給○○円、Bバイトは時給××円」など、あらかじめ業務内容や責任の度合いによってランクを分けた上で時給を提示するパターンもあります。
◆特別手当
時給ベースの給与とは別に支給されるのが「特別手当」です。
企業によっては「バイトリーダー手当」といった名称をつけて支給することもあります。とくに飲食店のバイトリーダーは、そのスタッフ目当てに来店するお客さんがいたり、長時間シフトに入ってくれたりと、売上への貢献度が高くなるケースが少なくありません。そこで他のアルバイトと差をつければ、モチベーションアップにつながるでしょう。
◆ボーナス(賞与)
アルバイトにボーナス(賞与)を支給するケースもあります。ただし、ボーナスの回数や支給額を労働条件通知書や就業規則に明記すると、支給することが前提になってしまうため、注意が必要です。
アルバイトの給与で個人差をつけるときの注意点
◆アルバイトに任せている業務の棚卸しをする
給与面で個人差をつけると、「Aさんは時給1,200円なのに、なぜ私は1,100円なのか?」といった不満を持つアルバイトが出てきます。「Aさんには○○の業務を担当してもらっているから」「鍵の開け閉めなど、責任のある仕事を任せているから」など、明確な理由を説明できる状態にしておかなければなりません。
アルバイト間の感情的なトラブルを防ぐためにも、まずは業務の棚卸しをしてください。アルバイトに任せている仕事をリストアップし、それを元に給与をランクづけしていくとよいでしょう。
◆雇用契約書を変更して、アルバイト本人に通知する
時給に伴って就業時間が変わるなど、雇用契約内容が大きく変わるケースもあります。その場合は、雇用契約書の中から変更する箇所をピックアップし、アルバイト本人に通知すると確実です。
◆面談を実施する
時給をアップする場合、対象者と面談する時間を設けるとよいでしょう。「あなたの○○の能力を高く評価しているので、時給を1,100円から1,200円にアップします。それに伴って、新たに××の職責を担ってもらいます」と説明すれば、モチベーションアップにもつながります。
給与アップ時は、企業がアルバイト従業員に対して求めていることを言いやすいタイミングです。面談では、日頃の感謝の気持ちとともに、改善して欲しい部分も伝えてください。その際、「もっと頑張って」など抽象的な言葉ではなく、具体的な行動で説明すると、本人に伝わりやすいでしょう。給与アップの機会を有効に使ってください。
※記事内で取り上げた法令は2022年9月時点のものです。
<取材先>
りつ社会労務士事務所代表 社会保険労務士 佐藤律子さん
滋賀県彦根市出身。大学卒業後装置製造業にて、主に要員管理と教育体制整備、評価制度構築等の人事労務業務に一貫して携わる。2018年、りつ社会保険労務士事務所を開設。実情に合わせた柔軟な施策をとることを第一にし、企業の人事制度構築と安全衛生遵法体制整備をサポートしている。
TEXT:村中貴士
EDITING:Indeed Japan + ノオト