第10回 株式会社Synamon 岩見直哉さん
【プロフィール】
岩見 直哉さん
所属:株式会社Synamon
担当業務:採用全般に関わる企画・立案・運用・分析
業務歴:1年目
前職は従業員数3万人規模の大手重工メーカー勤務。「未来をつくるチャレンジをしたい」と、2021年10月にXR技術(VR/AR/MR)を活用したサービス開発やメタバース構築支援を手掛ける株式会社Synamonへ転職した。
2016年に創業した同社の採用担当者として、優秀な人材を採用して組織の能力密度を上げることを目標に業務に取り組む。応募エントリー数の少なさや応募者に接触できても内定につながらないといった難しさを抱えるが、岩見さんにとってはよりよい施策を目指して仲間と議論しながら毎日もがくことが楽しく、日々生まれる課題への取り組みと変化のスピードにやりがいを感じている。
従業員一人ひとりが会社のために行動する姿を目の当たりにし、採用担当として「会社を成長させて未来をつくりあげるために、リーダーシップがとれる人材を仲間に引き入れたい」との思いで業務に取り組んでいる。
採用人事の担当者におすすめしたい3冊は?
◆『採用基準』
(伊賀泰代著/ダイヤモンド社)
著者は、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社で12年間採用マネージャーを務めた人物です。同社の採用基準を「グローバルビジネスの現場でリーダーシップを発揮できるかどうか」だとし、そうした人材が現在の日本に足りていないと言います。
本書でいうリーダーシップとは、目標を掲げ、先頭を走り、決断し、目標をわかりやすくメンバーに伝えること。組織におけるリーダーは役職ではなく成果を出す人であり、一人ひとりがリーダーシップを持つべきだとしています。
共感した私は、常に「組織として出すべき成果は何か」を念頭に置くようになりました。そして3つの問題点に気付き、その対処方法に思い至りました。
1つめは、成果を主眼に置かないと、コミュニケーションや組織内のチューニングの価値を判断できず、成果達成を妨げることがあるということです。「成果はとことん追求し、ディティールは各担当者に任せよう」と割り切り、自分は大きな成果達成の責任を負って、一段高い視座で物事を見られるようになりました。
2つめは、成果を意識するうえで置いてけぼりにしていいチームメンバーなどいないということです。組織において、部下一人ひとりは持ち味が違ったり、苦手な分野を持つ部下がいたりもします。こうした状況を、ともすればマイナス要因に捉えてしまうかもしれませんが、誰もが貴重な戦力であることは間違いありません。本書を参考に、一緒に働くメンバーに対してどうすれば成果が最大化する人なのかを観察し、その人に合わせた対応や助言を心がけるようになりました。
3つめは、前例や成功例はあくまで参考の1つであるということです。タイトルである「採用基準」の通り、「成果を出せる素質は採用時に見極めるべきものだ」と感じました。
本書を読み、成果達成を妨げる思考や行動をそぎ落とせるようになりました。また、成果に主眼を置くことでマネジメント手法が変わり、周りの目や前例を過剰に気にしなくなりました。
◆『自分の小さな「箱」から脱出する方法』
(アービンジャー・インスティチュート著/金森重樹監修/冨永星訳/大和書房)
本書では、自分を取り巻く人間関係のトラブルの原因は自分自身が引き起こしていて、それを「箱に入っている状態」だとしています。人間関係を円滑にする考え方を学べると、世界的なベストセラーになった本です。私自身がSynamonの採用面接を受けた際、従業員が本書の考え方を大事にしていると聞いて興味が湧き、読みました。
ここで示される「箱」とは、「自己欺瞞」を表現した言葉です。自己欺瞞とは自分をだましている状態のこと。他者を思いやる行動を取る方がいいとわかっているのに、自分を正当化し自分本位の行動を取ってしまう。これが自己欺瞞です。この状態では、他の人に本当の意味での高いアウトプットを出してもらうことができません。
Synamonの選考過程において、「心地よく本質的な話ができること」、「社会の目線でXRに取り組み未来を創ろうとしていること」という2点に惹かれたのですが、Synamonは「箱の外にいる」ことが原点なのだと、本書を読んで腑に落ちました。入社後、その思いはさらに強固になっています。
本書を読んでからは自己欺瞞に陥っていないかを振り返るようになり、周囲の人とのコミュニケーションの取り方が大きく変わりました。ビジネス・私生活に関わらず、人と関わる上でとても重要なことを伝えてくれる本です。
◆『経営戦略の基本が「イチから」身につく本』
(手塚貞治著/すばる舎)
経営戦略に関する仕組みやメソッドを誰でもわかるように簡略化し、まとめている本です。
内容は本当に簡単で、とてもわかりやすい。「経営戦略」は様々な問題へのアプローチに使うことができるので、この本を読んでいると「あれ? このモデルは採用業務にも活かせそうだな」とアイディアが湧いてくることがあります。
実は、この本は社会人1年目に「将来は経営者になりたい」と意気込んで購入したものの、そのまま読まずに放置していたんです。その後、後輩の育て方に悩んだ3年目に、埃を払い読みました。後輩の「コア・コンピタンス」を考えてみたり、ビジョン、戦略、戦術に落とし込んだりと、自分なりにアプローチする面白さを知ったのは本書のおかげです。
その後も大きな問題を抱えるたびに読み返して、問題解決のヒントを探しています。本書を読んでから常に経営の視点を意識するようになりましたし、問題解決が好きになりました。
【テック企業の現役採用担当に聞く】求めるエンジニアへのアプローチ方法
当社では「求めるエンジニア像」について下記のように定めています。
- 顧客に寄り添って課題を解決する力があり、そのために必要な技術を幅広くキャッチアップできること
- コードを書くだけでなく、リーダーやマネジメント業務を通して組織で成果を出すことに面白みを感じてくださること
ただ、こうした要件は、書類や転職媒体の登録情報だけではわからないというのが正直なところです。そのため、カジュアル面談を積極的に実施して、本格的な選考の手前の段階で互いの理解を深めるステップを入れています。
その際には、採用担当だけではなくエンジニアにも一緒に面談へ参加してもらっています。「〇〇の技術」といった特定領域でのアプローチだけではなく、求めるエンジニア像を明確にした上で、その素養を現場のエンジニアと共に見極めるという方法です。採用担当だけでなく、会社一丸となって採用に取り組んでいるのは大きな特徴だと思っています。
エンジニア採用に注力する企業は多いかと思いますので、ひとつの手法として参考になれば幸いです。
TEXT:合戸 奈央
EDITING:Indeed Japan + ノオト