現役採用人事の本棚 私の3冊(第20回:ヤマップ)

現役採用人事の本棚 私の3冊(第20回:ヤマップ)


培ったスキルと経験を存分に活かすには自身の信念を大切にしつつ、知識や理解を更新し続ける「アップデート」が必要です。本を読むことは気付きを得たり、ものごとを再認識したりするよい機会になるでしょう。
連載「現役採用人事の本棚 私の3冊」では、業務のスキルや心構えに役立つおすすめの本を現役の採用人事担当者が紹介します。今回は、約20年に渡る人事領域の業務経験を持つ内海良介さんに、影響を受けた3冊を聞きました。

 
 

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第20回 株式会社ヤマップ 内海良介さん

 

【プロフィール】
所属:株式会社ヤマップ Corporateグループ
担当業務:人事責任者として採用全般・人事企画・研修育成・組織開発業務に従事
採用人事の業務歴:約20年(同社での業務は2021年11月より)
 
複数の企業で、新卒採用・キャリアアドバイザー・採用コンサルティング・組織マネジメントとHR領域の全般業務に携わる。その後、登山アウトドア向けのWebサービスとスマートフォンアプリ「YAMAP」を開発・運営する株式会社ヤマップに入社する。
 
採用と組織づくりで大切にするのは、「個人(候補者・メンバー)の『WILL・CAN』と組織(企業・部門)の『期待・アサイン』を最速で最適に紡ぐこと」。個人と企業に向き合い伴走してきた経験を活かし、今後もあらゆるところで「良き介在」を目指していきたい。

 
 

採用人事の担当者におすすめしたい3冊は?

 
 

◆『持続可能な資本主義』

(新井和宏著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 
著者は「人と社会を犠牲にして利益を追求する現在の資本主義に永続性はなく、持続可能な経済の仕組みを考えなければならない」と主張します。この考えに基づき、社会性と経済性を両立する金融ベンチャーを創業した著者が、信頼と共感で成り立つ経済のしくみについて記した本です。ヤマップのCEOから推奨されたのが読むきっかけでした。
 
人事という立場は社内のメンバーや経営層だけでなく、自社の事業と経営が関わるすべてのステークホルダーを意識することが大切です。
 
本書では「企業」を中心に置き、次の8つのステークホルダー(1)社員(2)取引先(3)株主(4)顧客(5)地域(6)社会(7)国(8)経営者 に対して共通価値を創出する「八方よし」を目指そうと推奨しています。
 
これからの人事活動を進めていくには、本書で中心とされる「企業」を「人事」に置き換えて読み、経営者・事業責任者のパートナーである「HRビジネスパートナー(HRBP)」として価値を創出していくことが必要不可欠です。
 
本書を読み、「社会は『人』で成り立っている」、「それぞれの関わりや関係性の質が社会の価値創出に大きく影響を与えている」と再認識しました。さらには私がヤマップの人事責任者としてその起点になることへの責任感とやりがいを感じながら、日々の業務に取り組むよう意識を高めることが出来ました。
 
この本は私が大切にしている「良き介在を果たして生きる」という価値観にまさに合致しており、何度も読み返しては自分自身の生きる指針にしている一冊です。

 
 

◆『エンジニアリング組織論への招待』

(広木大地著/技術評論社)
 
ミクシィの新卒入社一期生である著者が自身の経験を基に、エンジニアリングにおける課題を解決するための思考整理法やメンタリング手法を綴った本です。私にはエンジニア経験がないため、人事としてエンジニア組織の開発に向き合う上で、その理解を深めバイブルとして活用している一冊です。
 
メンバーの半数にあたる約40名がエンジニアであるヤマップは、プロダクトの自社開発にこだわるエンジニアリングカンパニーです。しかし私自身は、これまで直接エンジニア組織と関わった経験がありませんでした。
 
CTOに相談したところ本書を薦められ、まずはエンジニアメンバーの「思考・志向」を理解することから始めようと読み進めました。そして、エンジニアリングに最も必要な要素は「コミュニケーション」と「HRT(Humility・謙虚、Respect・尊敬、Trust・信頼)」であると気付かされました。
 
本書を読んで以降、エンジニアだけでなく様々な職種のメンバーに対してもHRTを重視して接しています。さらには「課題の要因の大半はコミュニケーションにある」という前提を持つことで解決の糸口を見出しやすくなり、以前よりもコミュニケーション課題に対して積極的に向き合えるようになりました。

 
 

◆『とんび』

(重松清著/角川グループパブリッシング)
 
高度経済成長に活気づく時代に瀬戸内海の小さな街を舞台に描く、父と息子の物語です。親子の絆、家族の大切さ、地域での子育て、人の成長における苦悩と希望の様々なストーリーに、子供を持つ親として心も頬も洗われました。
 
中でも、父が息子に「おまえにはお母ちゃんがおらん代わりに、背中を温めてくれるものがぎょうさんおるんじゃ、それを忘れるなや」と語りかける台詞が印象に残っています。
 
人事というポジションは「聴く」「理解する」と同じくらい、「伝える」「表現する」ことが大切です。どんな言葉で綴って、相手にどのような気持ち(心情)になってもらうかがとても大事になってきます。
 
そのために必要なセンスを磨くには、良い言葉と文章に触れることです。『とんび』には作者の見事なまでの描写と言葉選びのセンスが散りばめられています。人事に限らず、すべてのビジネスパーソンにおすすめしたい一冊です。
 
また「プランドハップンスタンス」というキャリア理論でも証明されているように、人のキャリアは「出会い」と「経験」で構成されています。そのため誰と出会い、何を感じるかが大事です。自社のメンバー同士も出会いを大切にしてほしいと、最近では社内コミュニケーションの強化に一層注力するようになりました。

 
 

【現役人事責任者からのメッセージ】組織カルチャーの維持・形成で大切にしているのは「信頼関係」


ヤマップのメンバーは、ビジョン・ミッション・バリューを理解した上で、自己裁量で業務を進めているのが特徴です。「自律」や「自走」は、採用基準においてもとても重視しています。
 
人事制度も「自律」「自走」の組織カルチャーを尊重し、社内のメンバーを信じて出来る限り性善説のうえで設計しています。さらに、ヤマップの組織カルチャーを維持するために、経営陣やリーダーとメンバーとの信頼関係をとても大切に紡ぎ続けています。双方の間に立つ人事が信頼関係を強固にしていくことこそがヤマップのカルチャーを創っていく源泉になると感じています。
 
ただし、制度や取り組みは、組織拡大や社会変化・事業成長に伴い、改善し続けなければいけません。ヤマップには「人事制度は永遠のβ版」「制度もカルチャーもメンバー全員で創りあげていくもの」という共通認識が根差しています。引き続きメンバー全員で人事制度や福利厚生の改善・バリュー浸透に取り組んでいきたいと考えています。
 
今回ご紹介した本やヤマップの取り組みが、少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。

 
 
 

TEXT:合戸 奈央
EDITING:Indeed Japan +ノオト

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