現役採用人事の本棚 私の3冊(第14回:土屋鞄製造所)

現役採用人事の本棚 私の3冊(第14回:土屋鞄製造所)


中小企業の採用人事は、担当社員の数が少なく、仕事に関しての悩みを抱えがちです。連載「現役採用人事の本棚 私の3冊」では、業務のスキルや心構えに役立つおすすめの本を現役の採用人事担当者が紹介します。今回お話を伺ったのは、ランドセルやバッグなどの皮革製品を中心に展開する土屋鞄製造所の三木芳夫さんです。いつもより1冊多く、計4冊を教えていただきました。

 
 

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第14回 株式会社土屋鞄製造所 人事本部長 三木芳夫さん

 

【プロフィール】
採用人事の業務歴:約15年。同社では4年目
担当業務:株式会社土屋鞄製造所および株式会社ハリズリーの人事管理
 
株式会社土屋鞄製造所は1965年にランドセル工房から始まり、現在はバッグなどの皮革製品ブランドを展開する。株式会社ハリズリーは、株式会社土屋鞄製造所が母体のハリズリーグループを統括し、自社のブランド形成・運営などを行う。
 
三木さんは2006年からブライダル企業で新卒採用や育成計画、評価制度設計などに携わった後、2019年に株式会社土屋鞄製造所人事本部長、株式会社ハリズリー人事管掌執行役員として入社。2021年にはハリズリーグループの一つである株式会社キューの代表取締役社長にも就任した。

 
 

採用人事の担当者におすすめしたい3冊は?

 
 

◆『イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」』

(安宅和人著/英治出版)
 
著者はイェール大学脳神経科学プログラムで博士号を取得したほか、大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーやヤフー株式会社のチーフストラテジーオフィサー(CSO)として活躍した経験の持ち主です。同書ではこれまでの多彩な経歴を活かして、様々な問題の設定やその解決法を示しています。
 
私がこの本を手に取ったのは経営陣とコミュニケーションを取る機会が増えた時期です。本質的な課題を見つけて議論したいと思っていました。おかげでこの本を読んでからは、問題にぶつかった時に、「それは問くべき価値のある問いなのか」と本質を見極める癖がつきました。
 
個人的には、「はじめに」の章にある「悩まない、悩んでいるヒマがあれば考える」という言葉が印象的です。ビジネスや人生において必要な考え方が凝縮されていると感じました。

 
 

◆『純粋理性批判(上・中・下)』『小論理学(上・下)』

(カント著、篠田英雄訳/岩波書店)
(ヘーゲル著、松村一人訳/岩波書店)
 
カントとヘーゲルといえば、高校で公民の時間に学習する哲学者です。この2人の書いた本は、今の私の意志決定の礎につながっています。
 
その考え方のうちの一つが、「感性・理性・悟性」です。「感性・理性・悟性」とは、カントの『純粋理性批判』に出てくる言葉で、私たちが世界を認識する際に、感性(感覚で情報を得る能力)、悟性(理解力)、理性(理解をもとに推論する能力)の3つの能力が力を及ぼしているという主張です。
 
一方、ヘーゲルの『小論理学』では「ジンテーゼ」という考え方が印象的でした。「ジンテーゼ」とは、一つの意見「テーゼ」と、その反対意見「アンチテーゼ」があるとしたら、その両方の意見を統合し、より優れた意見を見出したものをいいます。つまり、対立した意見から新しい解を見出す弁証法的な考え方が示されているのです。
 
読了後は、自分の絶対視していた価値や意味が、実は小さな世界でしか通用しない可能性に気付けました。どんな言葉が印象に残るかは、読者の感性に委ねられると思いますが、手に取ると新たな発見につながりますよ。

 
 

◆『行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論』

(舞田竜宣、杉山尚子著/日本経済新聞出版)
 
本書は、アメリカの心理学者スキナーによって体系化された「行動」を科学的に研究する「行動分析学」を人事領域に照らし合わせた意欲作です。人の取る行動の原因を、「やる気」など心の問題ではなく外的環境に求める「行動随伴性」という概念によって、理想の組織がどうすればできるのかを考えていきます。
 
この本を読んだ時期は、継続的に成長する企業について考えていました。印象的だったのは、「企業は社員によって構成されている。社員の行動の集積が企業活動そのものである。したがって、企業組織マネジメントの究極の課題は、社員、すなわち、人間の行動の問題といってよい」という一節です。
 
ユニークな社員の行動を正しく導けば、そこに大きな可能性が広がると信じるきっかけにつながりました。

 
 

【自社での取り組み紹介】他社にはない付加価値を考えて発信する


ブランドにはそれぞれストーリーがあります。そのストーリーは、入社を希望する応募者にも事前に知ってほしいもの。しかし、自社ブランドの知名度が低い場合は、どのように知ってもらえばいいか、悩むと思います。
 
そういう場合はまず、「自分たちが伝えたい、かつ他社にはない付加価値」を考えてみます。もし、他社にはない付加価値が見つからないのであれば、なぜ事業活動を行っているのかを振り返ってみてください。どの企業にも、取引先、あるいはお客様がいるはずです。自分たちが相手に提供できる価値は何なのか。解像度を上げて考えることが重要だと思います。
 
自社の価値を見出したら、次は「伝える」フェーズです。現在では、企業の発信方法は多様化しています。採用や広報の観点から、社員が所属企業を明らかにした個人アカウントでSNSを運用することもあるでしょう。この時、使う言葉や表現が会社の価値を高めるかどうかを意識した発信が大切です。
 
私たちの場合、所属を明らかにして新規にSNSでの情報発信を始める社員にはガイドラインを設けています。
 
ブランドを扱う以上、事業価値が毀損されるような言動は許されません。社員が実名でやる場合もそうでない場合もリラックスして行うのが良い反面、使い方によってどんな影響があるか理解してもらう必要があるのではないでしょうか。

 
 
 

TEXT:ゆきどっぐ
EDITING:Indeed Japan +ノオト

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