2021年~2023年卒の新卒採用状況について
◆求人倍率は低下したものの復調の兆しも
日本では2020年1月から始まった新型コロナウイルス感染症の流行によって、新卒採用の求人倍率は以下のように変化しました。
2020年卒……1.83倍
2021年卒……1.53倍
2022年卒……1.50倍
特にコロナ禍で影響を受けた飲食業、アパレル業、旅行業などを中心に採用数が下がったと考えられます。
とはいえ、バブル崩壊後の1999年卒(0.99倍)やリーマンショック後の2011年卒(1.28倍)ほどの低下は認められませんでした。
また、2023年卒では1.58倍と、過去2年よりも復調の兆しが表れています。コロナ禍も3年目に入り、感染症対策を講じ共生しながらの成長戦略を掲げる企業が増え、今後も企業の採用意欲は高まっていくと考えられます。
引用:「求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移」第39回ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒)/リクルート ワークス研究所調べより
2021年卒~2023年卒の採用における特徴
◆オンラインを活用した選考が普及
コロナ禍での採用選考において、最も特徴的なのはオンラインの活用です。特にコロナ禍の初期である2021年~2022年卒の新卒採用選考時は、緊急事態宣言の期間が長く、また現在ほど感染症対策も構築されていなかったため、合同説明会から一次面接、最終面接に至るまでをオンラインで行う企業が多く見られました。
◆2023年卒は「最終面接」のみ対面が増加
ワクチン接種などの感染症対策が拡充してきた2023年卒の採用選考においては、合同説明会や一次・二次面接はオンラインで行い、最終面接は対面で行う企業が多い傾向にありました。オンラインによる選考が普及しても、企業側は最終的には互いが顔を合わせ、候補者の人となりを実際に見て選考することを重要視していると考えられます。
引用:「採用活動中間調査 就職活動状況調査 データ集 2023年卒」就職みらい研究所. p.5-6
◆学生もオンライン選考を支持
学生を対象に調査した、就職活動におけるプロセスごとのWebと対面の希望割合については「合同説明会・セミナー」「個別の企業・組織団体等の説明会・セミナー」「面接選考」のいずれも「Webの方がよい」が「対面の方がよい」を上回っています。
理由としては、自宅でリラックスをした状態で面接を受けられることや、地方学生にとっては、時間と交通費をかけずに多くの企業の選考を受けられることがメリットと感じていることが考えられます。
2024年卒以降の採用活動に向け、どのような取り組みが必要?
◆オンラインと対面の選考を使い分ける
企業のPRや説明を行う合同説明会や、人数の多い一次面接などはオンラインで行い、双方向で情報のやり取りがより重要度を増す最終面接は対面で行うなど、ケースバイケースでの使い分けをすると効率よく選考を進められます。また、最終面接を対面で行うことで、学生も企業の雰囲気を肌で実感でき、ミスマッチを防ぐことにもつながります。
◆新卒者が企業に何を求めているかを知る
民間企業への就職確定者を対象にした調査によると、就職先を確定する際に決め手になった理由として「自らの成長が期待できる」(47.7%)という回答が多く見られました。コロナ前から同様の傾向はあったものの、コロナ禍によってリモートワークや兼業・副業が増え、「世の中の大きな変化により、勤め先の企業に何かがあっても、自分で生きていけるように力をつけていきたい」と考える人が増えていると考えられます。このような学生や就職確定者の選社基準を踏まえて、自社の強みや問題点を分析しましょう。
引用:「就職みらい研究所『就職プロセス調査(2023年卒)2022年12月1日時点 内定状況』」より
◆自社の環境を見直す
採用において、どれだけ魅力的なうたい文句でPRをしても、実情が追いついていなければ人材は定着しません。まずは、今いる従業員がやりがいや職場への安心感、成長性を感じながら働いているかを見直し、必要に応じて環境を整備していくことが最も重要です。
リモートワークなどの普及により、より柔軟な働き方が求められるようになりました。自社に合った新卒採用者を獲得するためには、まず学生が企業に何を求めているかを知り、経営者が意識を変え、自社の環境を見直していくことが不可欠です。
※記事内で取り上げた法令は2022年11月時点のものです。
<取材先>
就職みらい研究所 所長 栗田貴祥さん
1992年(株)リクルート入社以来、30年にわたりHR事業領域に従事。新卒採用・中途採用・教育研修等の提案営業を経験の後、新卒メディア・中途メディア事業の営業部門、人事・組織開発、広報などのスタッフ部門の部門長を経て、2021年4月より、リクナビ編集長に就任。2022年4月より現職。
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト