配属を決める時期と基準は?
――配属を決める時期はいつ頃がいいのでしょうか?
「採用時」「内定式」「4月1日」「仮配属後」のいずれかのケースがありますが、ほとんどの会社は4月1日以降に設定しているかと思います。入社前に決まった配属先が不満だと、他の会社の採用試験を受けに行くなどし、内定を辞退されてしまう可能性があるためです。
ただし、配属を決めるまでの時間が長くなればなるほど、現場の第一線で活躍できるまでの期間が長くなりますから、新入社員を即戦力として採用した企業はできるだけ早い段階で配属先を決めるとよいかと思います。
――何を判断基準として、配属先を決めるとよいのでしょうか?
基本的には、「本人の希望」と、その部署で活躍できそうかという「未来への期待値」の2軸で考えるとよいですね。適性を見るのも重要ではありますが、新入社員は入社したばかりで仕事におけるスキルを持っていないことのほうが多いためです。
本人のやる気があれば、元々の能力が多少不足していても、努力で補って結果を出してくれる可能性があります。しかし、あまりに向いていない部署に配属してしまうと、本人のモチベーションが下がり、結果を出せないというケースは珍しくありません。
傾聴力やケアレスミスの少なさといった、どの部署でも適用できるポータブルスキルとの相性を見つつ、よほど向いていない場合を除いては本人の希望を優先させてあげるとよいのではないでしょうか。ただし、新入社員にも即戦力になってほしいと考えている企業の場合は、将来性よりも、現状の適性を見極めることがより重要になります。
――入社時の適性を見極めるにはどうしたらよいでしょうか?
まずは選考内容を見直してみましょう。配属する予定の部署を想定し、その部署との相性が良いかを判断できるような選考内容にできれば、入社後の配属もスムーズです。
また、内定者時代にイベントや研修などを行う方法もあります。採用してから入社するまでの間に、会社も内定者の状況も変わる可能性がありますから、定期的に接点を持って本人の希望や適性を把握しておくとよいでしょう。
また、新卒採用をするメリットには、新入社員を受け入れる部署が新たな人材を育てることによって成長することも含まれます。配属先を決めるうえでは新入社員が活躍できるかどうかだけではなく、部署の成長につながるかどうかといった部署視点の基準も考慮してみてください。
配属先の決定には、受け入れ部署と新入社員の「納得感」が大切
――配属先を決めるときは、どのような手順で進めるとよいでしょうか。
人事側で新入社員の適性を見極めた後は、各部署の所属長を集めて会議を行い、各部署で受け入れられる人数や希望をヒアリングします。人事だけで決定すると現場との軋轢が生まれますし、受け入れに対して消極的な部署に無理に配属してしまうと、新入社員へのケアが行き届かず、新入社員のモチベーションが下がって退職してしまう可能性もあるためです。
人事として新入社員を配属したい部署が非協力的な場合は、人を採ることによるメリットを丁寧に伝えてください。実際に、人が増えることによって、自分の仕事が楽になって新たな挑戦がしやすくなる、新入社員を教育することによって部署の成長につながる、有休がとりやすくなるといったメリットがあります。こうしたメリットを各部署の課題に合わせて提案すると、受け入れに対して前向きになってくれる可能性があります。
――新入社員に決定した配属先を伝える際、気を付けるポイントはありますか?
最低限行うべきは、書面で内示を出すことです。ただし、新入社員にモチベーションを高く保って仕事をしてもらうためには、「なぜその部署に配属されたのか」や「その部署に行くとどんな期待があるのか」といったことを、所属長と人事が協力して伝え、納得してもらうことが必要です。
そのためにも、配属先を決める段階で部署の所属長の要望に耳を傾け、良好な関係を築いていくことが大切になります。
配属後の定期的なフォローアップが、離職を防ぐカギ
――配属後のトラブルにはどんなものがありますか?
最も多いトラブルの一つは、新入社員が配属先に納得できずに辞めてしまうことです。最近の多くの学生さんはすぐに活躍したいという気持ちが強く、新卒で入社した会社で定年まで働こうとは考えていません。自分の今後のキャリアを見据えて、必要であれば転職するという選択肢も持っています。
なぜ自分がこの部署で仕事をするのかという納得感が得られないと、「自分は会社に貢献できているのだろうか」「自分の今後のキャリアに意味があるのだろうか」と不安になり、モチベーションが下がって退職してしまうことにもなりかねません。配属先が決まったときはもちろん、その後も定期的にフォローアップの機会を持つことが大切です。
――具体的にはどのような方法でフォローしていくとよいでしょうか。
具体的な方法の一つに、人事と新入社員が1対1で話す「1on1 ミーティング」があります。ミーティングを行う頻度は、月に1回がベストです。3カ月以上空けてしまうと、コミュニケーションをとらないうちに不満が大きくなり、転職活動を始めて内定が決まってしまう可能性もあるため、期間があまり空かないように注意してください。
――1 on 1ミーティングを務めるのは人事が適任でしょうか?
そうですね。部署の所属長はどうしても直近の業務についてのアドバイスをせざるを得ない立場ですが、人事は2~3年後を見据えたキャリアの話ができます。そのため、現状の配属や業務に満足していない社員の視点を未来に向けさせ、モチベーションを維持させやすくなります。
また、新入社員と上司部下の立場にはない間柄ですから、新入社員の本音を引き出しやすくなるのも利点です。とは言え、人事部も社内の人間ですから、新入社員から本音を引き出せていないと感じる場合などは、外部のキャリアコンサルタントを定期的な相談役に登用する方法もあります。
――各部署の上司にはどのように関わってもらえばよいでしょうか。
配属先の上司は、業務に関しての相談に乗るのに適しています。ランチやお茶に誘って日常業務の相談に乗ったり、愚痴を聞いてガス抜きさせてあげたりするとよいでしょう。このように「この相談はこの人に」という相談先の引き出しをいくつか持ってもらうことで、モチベーションが続きやすくなります。
配属先の見極めも重要ですが、新入社員の希望や能力が配属先に適していても、その後のマネジメントがうまく回らないと離職につながってしまいます。入社直後は新入社員にとっては不安が多い時期ですから、人事と各部署が協力して定期的にフォローアップすることが大切です。
<取材先>
株式会社アールナイン
「~人が介在することで、【活き生き】と働ける世界を~」を目標に掲げ、人材に関するソリューションを提供する企業。採用、人材育成、社員の定着など企業が抱える様々な課題に、人事・採用・教育など各分野で豊富な経験を持つ当社の人材プロフェッショナル(約900名)が介在して課題を解決し、職場をよりよくするためのサポートを行う。企業のお悩みに合わせたサービス提供により、2009年の設立以来、約550社の企業と取引実績がある。(2022年11月現在)
TEXT: 佐々木ののか
EDITING:Indeed Japan + ノオト