労働契約法とは? 労働基準法との違いも解説

会社で働く人たちの様子

労働契約法とは、企業と労働者の間で締結する労働契約に関する法律です。労働基準法との大きな違いや重要な条文について、多数の上場企業・成長企業で外部から法務をサポートするAnthense法律事務所の弁護士・野村佳祐さんに、伺いました。

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労働契約法とは

労働契約法とは、個別の労働関係紛争が増加したことを受けて2008年より施行された法律です。
 
それまで企業と労働者の間でトラブルが起きた際には、「過去の裁判ではこのような判断が出ている」という判例法理に沿って検討されるケースが一般的でした。しかし、一般の労働者からすれば過去の判例は決してアクセスしやすいとはいえません。
 
そうしたわかりづらい状況を改善し、事案を解決するために、企業と労働者が締結する労働契約についての基本的なルールをまとめた法律が労働契約法です。

 
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労働基準法とはどこが違う?

労働契約法と混同されやすい法律に、労働基準法があります。両者を比較すると、大きな違いは次の2点となります。
 

◆契約法は「企業-労働者」、基準法は「行政-企業」

労働契約法は「企業と労働者の間のルール」を定めた法律です。それに対して、労働基準法は「行政と企業の間のルール」ともいえる側面があり、企業が労働者との間で最低限満たすべき労働条件を企業側に課した法律です。
 

◆違反した際のペナルティの有無

労働契約法と労働基準法を比べたときに、最も大きな違いは違反したときの罰則の有無です。労働基準法は「最低限満たすべき労働条件」として行政が定めた法律ですから、違反すると懲役や罰金などの罰則を課せられる場合があります。
 
一方、労働契約法は「民事上のルール」であるため、違反してもそれ自体に直接的な罰則はありません。

労働契約法の重要な条文と注意点

企業が労働者を雇い入れる際には、雇用契約を締結する必要があります。後々のトラブルを回避するためにも、労働契約法における重要な条文を押さえておきましょう。
 

◆就業規則に関するルール

・第7条、第12条「就業規則で定める労働条件」

企業が労働者と雇用契約を結ぶ際には、契約内容や労働条件がどのように定められているかを労働者に企業側が周知する必要があります(第7条)。
 
労働契約を結ぶ際は、就業規則をもって労働条件とすることが一般的です。もしも労働契約の内容を合意により変更する場合でも、就業規則ですでに定められている内容より下回ることはできません(第12条)。

 

・第10条「就業規則による労働契約の内容の変更」

もしも労働内容を個別に変更する必要が生じた場合は、その変更内容に合理性があるかどうか、労働者に不利益な変更ではないかなどが原則として重視されます。
 
第10条では、企業が労働者にとって不利益となる変更(不利益変更)を一方的に行わないように、就業規則の変更により労働契約を変更する際には一定の制約を置くことが定められています。
 
企業によっては、厚労省が提示しているモデル就業規則をそのまま使っているところも珍しくありません。しかし、いざ運用すると現場の労働実態との間に齟齬が生じるケースも多くあります。就業規則の変更は非常に複雑で難易度が高いため、就業規則を定める際には十分に注意を払いましょう。変更を検討する場合は、弁護士や社労士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

◆労働契約の終了に関するルール

・第16条「解雇」

企業側の申し出により、一方的に労働契約を終了させることが「解雇」です。しかし、企業はいつでも労働者を解雇できるわけではありません。企業が労働者を解雇できるのは、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当である」の2点が認められた場合のみに限られています。
 
この2要件を満たさない限り解雇は無効になりますから、日本企業にとって労働者の解雇は非常にハードルが高いのが実情です。たとえば、単に「勤務態度が悪い」といった程度のことでは「社会通念上相当である」とまでは認められない可能性もあり、その場合は解雇することはできません。
 
日本企業においては「即日解雇」といったことを有効に行うにはハードルが高く、「複数回の指導を経ても改善が見られなかった」などの具体的なエビデンスをもって理論武装しない限り、基本的に解雇は認められません。解雇は日本の労働法関連法の中でも、最も大きな解釈の余地をはらんでいる事項のひとつといえるでしょう。
 
次に解説する第17条の趣旨も第16条とほぼ同様です。

 

・第17条「契約期間中の解雇等」

契約社員、パートタイマーのような有期動労契約(期間が定められている労働契約)においても、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において企業は労働者を解雇できません。
 

◆労働契約の変更に関するルール

・第18条「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換」

契約社員、パートタイマーのような期間が定められている有機労働契約が反復更新によって通算5年を越えた場合、労働者側から申込みがあれば、企業は有期労働契約から無期労働契約へと転換を行わなければなりません。
 
この場合、企業はその申込みを承諾したものとみなされるため、契約期間が満了する日までの翌日を開始日とする無期労働契約がすでに成立したものとして取り扱う必要があります。

 

・第19条「雇止め法理の法定化」

「雇止め法理の法定化」とは、有期労働契約の更新拒絶(雇止め)に関して最高裁で確立している判例法理を制定法化するものです。
 
雇止めが解雇と社会通念上同視できると認められる場合や、有期労働契約の期間満了時において雇用の継続(更新)を期待することに合理的な理由があると認められる場合、解雇に関する法理を類推し、一定の要件を満たさなければ雇止めができないことを定めるものです。
第16条と共通するキーワードは、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当である」の2点です。雇止めは不合理な待遇の禁止とも繋がっているため、企業側は気をつけておくべきでしょう。

 
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労働契約法は労働者を手厚く守るためのルール

労働契約法は判例法理をある程度までまとめた規律であり、必ずしも細かい部分まで規制されているわけではありません。企業と対峙したときに、弱い立場にある労働者が手厚く守られるためのルールとして企業側が注意深く運用していきましょう。
 
労働契約法は違反してもペナルティはないと前述しましたが、労働者からの通報があれば労基署によって実態調査が入るケースもあります。そうしたことを未然に防ぐために、取り扱いには注意しましょう。

 

※記事内で取り上げた法令は2023年1月時点のものです。
                 
<取材先>
Authense法律事務所 弁護士 
野村佳祐さん
 
第二東京弁護士会所属。複数の上場企業・成長企業で外部から法務をサポートしており、会社組織において日々生じる多種多様な法務課題の解決に注力。企業内での常駐経験を活かし、今あるビジネススキームを尊重しつつ業務効率化と法務観点での最適化の両立を達成する取り組みを支援している。
 
TEXT:阿部花恵
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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