第22回 セーフィー株式会社 堤大輝さん
【プロフィール】
堤大輝さん
新卒採用業務歴:1年目
大手総合電機メーカー・人事コンサルティング会社を経て、2021年11月にカメラ映像のクラウド録画サービスを提供するセーフィー株式会社へジョイン。新卒採用1期生となる採用活動の立ち上げに携わる。高いマーケットシェアを有する企業であるものの新卒採用マーケットにおける認知度は全くなく、ゼロから新卒採用活動を進めた。
現在は新卒採用の責任者として、2期生目の採用戦略企画・予算策定・採用広報・サマーインターンシップ企画・面接対応など、幅広く新卒採用業務を進める。
採用人事の担当者におすすめしたい3冊は?
◆『マーケティングとは「組織革命」である。』
(森岡毅著/日経BP)
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建した、プロマーケターの森岡毅氏による実践的な組織論です。企業がマーケティング力を構築する際の最大の課題は組織改革だとして、「組織革命」の方法やその理由について濃厚に語ります。
「採用」「人事」という文脈のみで書かれた本ではありませんが、「組織」という観点で自身の業務に直結しているからこそ当事者意識を持って読了できました。採用人事担当者に関わらず、「組織」に関わる全てのビジネスパーソンに読んで欲しい本です。
特におすすめしたいのは次のポイントです。
まず、「上手くいかない組織」についての部分で、コミュニケーション不全に陥る組織は、(1)年齢差 (2)役割差 (3)性別差の3つの差分が大きいと著者は指摘している点です。本書では企業が成長して大きな組織になる途上での特徴としていますが、ベンチャーや大企業など、どのフェーズの企業においても起こり得ると感じました。組織崩壊・組織機能不全を防止する上で、要因を知ることは重要だと思います。
また、人間の本質は「自己保存」であるという考えを学べたことも良かったです。狩猟時代を例にとり、縄張りの中で生活ができていた人間は移動という「変化」を拒否した経緯を知りました。この「自己保存」の法則は組織・個人に常に起こるものであるからこそ、組織として人事としてそれを逆手に取って動く必要があると著者は主張します。この考えは非常に印象に残りました。
本書を読んだことで思考の幅が広がり、組織としての最終目的地をより意識しながら業務に取り組めるようになりました。
◆『戦略人事のビジョン~制度で縛るな、ストーリーを語れ~』
(八木洋介、金井壽宏著/光文社)
NKKでの人事、GEのHRリーダーを経てLIXILグループ副社長に就任した八木洋介氏の実務経験に、経営学の博士である金井壽宏氏が理論に基づく注釈を付ける形で記した共著です。
人事になりたての頃、「戦略人事」のワードを非常に多く耳にしました。概念としては理解しつつもおぼろげな状態で、「戦略人事とは?」の問いを追求する中で本書に出合いました。
八木氏がいう「継続性のマネジメント」と「戦略性のマネジメント」の概念は、まさに探し求めていたものでした。戦略といいながら「手法」や「見せ方」を変えても、結局会社として「継続性のマネジメント(制度の固守)」を課すような企業では、戦略人事の推進は難しいため、むしろ人事部門から声を上げて風土改革していく必要があると感じました。
また「人事本来の在り方」を知る上でも、非常におすすめです。人事という仕事の性質上、事業そのものへの理解やファイナンス・事業開発と言ったビジネスサイドへの探求が足りていないケースが多く見受けられます。真の人事担当者は経営視点を持ってビジネス全体を広く理解した上で、人事的施策に落とし込む実行部隊であるべきだと痛感しました。
私は人事としてのキャリアを生涯のライフワークにしたいと考えています。その中で戦略人事を実現するためには、どんな知識・経験が必要で、どのように手に入れられるのかと、より深く遠くまで考えて行動するようになりました。自分自身の戦略人事の姿が鮮明になったのは本書のおかげです。
◆『イシューからはじめよ──知的生産の「シンプルな本質」』
(安宅和人著/英治出版)
本書は「本当に価値あるアウトプットを生み出すために必要な考え方」に的を絞って紹介しています。そのカギになるのは、「何に答えを出すべきなのか」という軸からブレることなく活動に取り組むこと。知的な生産活動の目的地になる「イシュー」をどう見分け、どう扱っていくかを説明しています。
著者は元マッキンゼーのコンサルタントを経て、イェール大学で脳神経科学について学び、現在はヤフーのCSOを務める人物です。著者は、量をひたすらこなすことで問題を解決しようとする「犬の道」に踏み込んではならないと言います。
ともすれば採用業務は膨大な業務量に圧倒され、目の前のタスクをこなすのに精一杯になりがちです。その中で、「今、自身が本当にやるべきこと=イシュー」に向き合えているかを常に問う必要があります。
通説として量は質に転化するとされ、自身の経験則からも一定の妥当性を感じていました。しかし、それはあくまでも根性で乗り切る「犬の道」であり、よりイシュードリブンな考えと行動をとることで、問題解決の質の向上が達成できると知りました。
コミュニケーションやパーソナリティといった定性的なテーマを扱うことが多い採用人事の担当者だからこそ、本書の考えを学ぶことで業務のレベルを上げられると感じました。折に触れてふと立ち止まっては内容を反芻して、自身の頭を整理するようにしています。
【自社での取り組み紹介】
◆採用サイトで評価を得ているコンテンツは? また制作において心がけている点は?
中途採用向けでは、社員インタビュー記事が好評です。セーフィーにはどんなキャリアを歩み、どんなパーソナリティの人がいるのかを知りたいというニーズに応えるコンテンツになっています。
また新卒採用においては、社長インタビューの動画が好評です。トップの口から直接発せられるメッセージはインパクトが大きく、様々な学生が入社意向を高めてくれています。
候補者が会社への理解を深められるコンテンツづくりを意識して、入社後に感じるギャップが少なくなるよう心がけています。
◆新卒採用で、求める人物像にアプローチするために実践している取り組みは?
1つ目は狙うべき層がいる場を特定した上での、適切な採用チャネルの選定です。ただ最初はそのチャネルがわからないので、まずは何でも試すようにしています。
2つ目は明確なペルソナの設計です。1人を徹底的に分析して理解を深めるマーケティング手法である「n = 1」を意識して採用活動を行うことで、求める素質を持った人材と出会う確率が高まります。
ペルソナの設計では、社内へのヒアリング、人事でのすり合わせ、経営層と認識のズレがないかの確認を徹底しています。
昨年末に初めて第1号となる新卒の内定承諾者が出た際は鳥肌が立つほど感動し、部活の試合で勝利したかのように興奮したことを今も鮮明に覚えています。
読書を続けて考えを広げながら、2期生目の新卒採用にも愚直に地道に取り組みたいと思っています。
TEXT:合戸 奈央
EDITING:Indeed Japan +ノオト